日本消化器病学会雑誌
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肝血管腫の自然経過の追跡検討
小林 多鶴子川野 正樹冨田 豊玉野 稔博三枝 咲美堀中 真子門馬 恒夫小熊 資男柳澤 伸嘉大江 毅前原 操菅谷 仁原田 尚
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キーワード: 肝血管腫, 自然経過
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1995 年 92 巻 1 号 p. 41-46

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抄録

超音波検査(US)ならびに各種画像診断およびaspiration biopsyにより肝血管腫と診断された23例,27病変の腫瘍径,数,US像の変化について追跡検討を行った.追跡期間は,平均44.2カ月(12~114カ月)であった.腫瘍径に変化が認められたのは,増大例3病変(11.1%),縮小例1病変(3.7%),消失例2病変(7.4%)の計6病変(22.2%)であった.肝の良性腫瘍である肝血管腫において,腫瘍径の変化が経時的に認められることは臨床上非常に興味深い.特に慢性肝疾患において小腫瘤性病変の腫瘍径が増大する場合,肝血管腫と原発性肝細胞癌(HCC)との鑑別が画像診断上難しく,今回followした症例中慢性肝障害(CLD)を認めたものは慢性肝炎(CH)7例,肝硬変(LC)5例の12例であり,うちsize変化を認めたものはCHの1例で,この例では消失している.したがって今回の成績からは,CLDのある例での血管腫の増大は認められず,もしCLD例で画像上肝血管腫が疑われても増大傾向があればHCCを考慮し積極的にaspiration biopsyを施行するべきである.

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