日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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自然経過を画像にて追跡しえた自己免疫性膵炎の1例
千住 恵重松 宏尚道免 和文入江 康司石橋 大海
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2001 年 98 巻 2 号 p. 188-193

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抄録

症例は81歳,男性,79歳時にUS,CT,MRIにて膵体部から尾部にかけてび漫性腫大を認めるも患者の希望にて外来で経過観察した.2年後の1999年に心窩部痛にて当科を再受診した.上腹部に圧痛をともなう腫瘤を触知した.肝胆道系酵素,膵酵素,CA19-9,DUPAN-2,SPAN-1の上昇および高γグロプリン血症を認めるも各種自己抗体は陰性であった.US,CT,MRIにて膵頭部から尾部にかけてび漫性の腫大を認め,内視鏡的逆行性膵胆管造影(Endoscopic retrograde cholangiopancreatography,ERCP)では主膵管の不整な狭細化ならびに下部総胆管の辺縁平滑な狭小化を認めた.膵生検像では軽度のリンパ球浸潤をともなう著明な線維化を認めた,これらの所見より自己免疫性膵炎(Autoimmune pancreatitis,AIP)と診断し,プレドニゾロン(Prednisolone,PSL)40mg/日の内服を開始した.自覚症状の消失とともに膵酵素,肝胆道系酵素,IgGの速やかな正常化を認め,投与開始3カ月後には画像上も膵腫大は正常化した.典型的なAIPでは膵のび漫性腫大を特徴とするが,頭部あるいは体尾部に限局性の腫大を呈するAIPも報告されている.今回われわれは体尾部から頭部への膵腫大の進展の自然経過を画像にて追跡しえたAIP例を経験したので報告する.

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