2001 年 98 巻 8 号 p. 911-915
潰瘍性大腸炎は,主として粘膜を侵し,しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸のびまん性非特異性炎症である.本症の病因は不明であるが,近年,若齢期の虫垂切除が潰瘍性大腸炎や動物モデルの腸炎発症を抑制することが相次いで報告され,虫垂と本症の病態との関連が注目されている.免疫器官としての虫垂の役割については不明な点が多く,腸炎抑制の機序はまだ明らかではないが,虫垂切除による腸粘膜免疫機構や腸内細菌叢の変化が深く関与している可能性がある.今後,潰瘍性大腸炎での虫垂の役割が明らかとなり,潰瘍性大腸炎の病因解明や治療に有益な情報をもたらすことが期待される.