抄録
制御工学に関する初学者向きの入門書において制御システム(制御系)がどのように表現されているかは、制御工学の学問体系や学界で共有された世界観を反映しており、工学者のふるまいに関わる。そこで本稿は、できる限り多数の書籍に当たろうとした4年前とは異なるアプローチとして、調査可能な全ての国立大学の学部について学生が初めて制御工学を学ぶ科目の2024年度シラバスを総当たりで調べ、代表的な教科書10冊と参考書3冊を抽出した。10冊中9冊の教科書は、制御工学の技術および理論が持つ通常の世界観を示しており、これは3冊の参考書においても同様であった。残る1冊は、制御対象と制御器の組み合わせからなる制御システムの外側の環境について本文で触れていた。