2023 年 17 巻 p. 72-82
中世に書かれた武家家訓の一つである武田信繁家訓は九十九条の家訓全ての文末に一条から最大六条の漢籍が引用される。『論語』は二十九条引用されており、家訓中に引かれる最多の漢籍である。 本稿は武田信繫家訓に引用される『論語』を調査し、使用されたテキストがいかなる系統の本文を持つものであるかを考察する。調査に際しては中国側刊本、『正平版論語』、『天文版論語』、『論語義疏』混入系統の写本、『論語集注』と校勘した。結果、使用されたテキストが『論語義疏』系統の本文を持つものであることを明らかにした。