関東甲信越ブロック理学療法士学会
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第28回関東甲信越ブロック理学療法士学会
セッションID: 52
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骨関節系
反復性膝蓋骨脱臼に対するMPFL再建術後の後療法と膝伸展筋力の経過について
*武藤 智則
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抄録

【はじめに】反復性膝蓋骨脱臼は、その発生に数多くの先天的解剖学的因子が大きく関与していると言われ様々な手術が報告されてきた。近年、内側膝蓋大腿靭帯(medial patellofemoral ligament:MPFL)が膝蓋骨の外側への移動を防ぐ最も重要な靭帯であると判明し、反復性膝蓋骨脱臼例に対するMPFL再建術の良好な成績が報告されている。だが理学療法の分野においては反復性膝蓋骨脱臼に対するMPFL再建術後の経過についての報告は少ない。今回、当院における反復性膝蓋骨脱臼に対しての半腱様筋腱(以下ST)とLeeds-Keio人工靭帯(以下LK)によるMPFL再建術後の各後療法を紹介するとともにMPFL再建術後の膝伸展筋力の経過について若干の知見を得たので報告する。 【対象】平成20年6月から9月までの4ヶ月間に当院にて反復性膝蓋骨脱臼に対してMPFL再建術を施行した患者9名9膝(女9名)のうち膝蓋骨脱臼後1ヶ月以内の急性期群(以下急性期群)4名4膝(平均年齢30.5±12.3歳、LKによる再建1例、STによる再建3例)と膝蓋骨脱臼後6ヶ月以上の維持期群(以下維持期群)5名5膝(平均年齢22.4±6.3歳、LKによる再建3例、STによる再建2例)とした。膝伸展筋力の測定はbiodex system3を使用しisokinetic 60deg/secで術前、術後1、2、3、4、5ヶ月目に測定した体重比トルク値(%BW)を評価値とした。 【治療プログラム】LKによるMPFL再建術後は翌日よりknee brace(以下KB)装着下での全荷重歩行を開始し4日目にKBは除去、6日目に松葉杖または歩行器は除去する。STによるMPFL再建後は6日目からKB除去して部分荷重での歩行ex.を開始し10日目に松葉杖または歩行器を除去する。共に術後2日目から膝ROMex.、筋力強化はpatella setting、SLRを行いleg extensionは4週目から、1段ずつの階段昇降は8週目より開始する。術後2~4週で退院となり退院後は術後3ヶ月目まで1回60分/週の理学療法を行った。 【結果】膝伸展筋力は術前、1、2、3、4、5ヶ月目の順に急性期群36.5±20.7%、75.7±31.9%、73.2±31.9%、113.7±25.5%、120.7±24.8%、151.3±7.1%であり、維持期群128.2±54.4%、26.5±27.4%、66.2±40.3%、92.4±53.0%、119.7±57.7%、165.3±39.1%であった。 【考察】術前の膝伸展筋力について、急性期群は受傷による影響で膝伸展筋力が低下したと推測されるが、脱臼後6ヶ月以上経過した維持期の患者でさえ女性一般60歳以上の平均値(141±34%SAKAI医療)より低値であるという結果となった。これは、もともとの解剖学的素因(アライメント異常、膝蓋骨高位、大腿膝蓋骨溝形成不全、内側広筋不全など)に加え、反復性に膝蓋骨脱臼を繰り返すことでスポーツ活動などを行わなくなってしまう例が多く、膝蓋骨脱臼に対する恐怖心が慢性的に身体活動性を低下させているのではないかと考えた。今後は症例数を増やしさらに長期的な経過を追っていきたい。

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© 2009 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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