2013 年 43 巻 p. 1-7
『御伽草子』所載の物語はすべて短編であり、また庶民的で素朴な物語が多く、そのため話型が比較的はっきりとした形で現れていることが多い。本稿は、そうした『御伽草子』所載の物語の中から、「御曹子島渡」、「浦島太郎」、「鉢かづき」の三編を取り上げ、筆者がこれまで発表してきた貴種流離譚としての構造になっているかを論定しようとするものである。 結果、「御曹子島渡」、「浦島太郎」、「鉢かづき」の三編は、もとよりそれぞれ細部には違いがあるものの、いずれも貴種流離譚としての構造を持っていることが明らかとなったのである。