抄録
本調査研究は、発達障害のある学生に対する大学、短期大学及び高等専門学校(以下「大学等」という。)と就労支援機関との連携による就労支援に関する実態の把握と今後の課題を検討することを目的として大学等及び就労支援機関への調査を実施し、発達障害のある学生に対する就労支援の現状と課題を検討した。
その結果、多くの大学等で発達障害の診断がある学生が在籍しているほか、発達障害が推察される学生(診断なし)も半数近くの大学等で在籍しており、診断の有無や修学支援の必要性に関わらず発達障害のある学生が就労支援を受けていることが明らかになった。発達障害のある学生は個別性が高く極めて多様な状態像を示しており、大学等では学生個々の状態に応じた効果的な支援を実施することが重要な課題となっている。
大学等と就労支援機関との連携を阻害する要因として、大学等からは学生を対象としている就労支援機関が少ないこと、就労支援機関情報の不足等が挙げられ、連携関係をさらに拡大していくためには、大学等には発達障害学生に対する就労支援機関等の情報提供を行うことで就労支援の理解を深めること、就労支援機関には実施する支援サービスの対象を発達障害のある学生にも拡大していくことが期待されている。