2020 年 5 巻 1 号 p. 38-44
硬膜動静脈瘻では,シャント血が脳表静脈へ逆流すると,頭蓋内出血やうっ血性静脈還流障害により重篤な脳障害をきたすことが知られている.しかしながら,その発症機序については不明な点が多い.そこで本稿では,硬膜動静脈瘻の脳静脈還流障害についてこれまでに得られた知見を概説する.脳血管撮影では,脳表静脈逆流,流出静脈上の静脈瘤,脳表静脈への直接の逆行性流出,isolated sinus の関与,pseudophlebitic pattern などが重篤な発症と関連していると示唆されている.また,われわれの123I- iodoamphetamine single photon emission computed tomography を用いた検討では,脳血流量の低下はうっ血性静脈還流障害による脳障害の程度と相関し,脳血管反応性の消失は不可逆的脳障害を示しており,予後予測に有用な可能性が示唆されている.硬膜動静脈瘻の予後改善のためには,脳静脈還流障害の病態生理の解明を中心としたさらなる研究の発展が不可欠である.