日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1N05
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一般演題
手術前患者の不安に対する手術室見学の効果
木村 沙緒利太田 君子
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抄録

1.研究目的
手術前患者に実際の手術室を見学して頂き、手術室についての情報や知識を提供することで、患者の心理状態にどのような変化が起こるかを明らかにする。
2.研究方法
1)方法:因果仮説検証研究
2)対象:平鹿総合病院手術室にて手術を受ける患者(手術室見学を希望した患者50名)うち男性21名 女性29名
3)期間:平成16年7月1日から9月10日
4)場所:平鹿総合病院手術室
5)データの収集方法:
(1)見学マニュアル、見学チェックリストを作成し、患者に統一した説明ができるよう手術室スタッフに説明する。
(2)各病棟師長に見学の希望の有無を確認していただき、FAXを送って頂く。
(3)見学及び術前訪問を実施し、STAIの質問用紙を使用して見学前後の状態不安の変化をみる。
(4)術後1週間以内にアンケートを実施する。(但し、心臓血管外科の手術においては患者の状態が落ち着いてから実施する)
6)分析方法:検定にはMann-Whitney法とWilcoxon検定を用いた。
7)倫理的配慮:対象者全員に研究の主旨を説明し、アンケートは無記名であること、診療に不利益を生じない旨を説明し同意を得た。
3.結果
今回、見学を希望された患者は全手術431症例の11.6%(50名)であった。また見学希望患者はすべて全身麻酔の手術予定患者であった。
1)STAIについて(回収率100%)
患者全体の見学前と見学後の変化については、見学前平均17.0点から見学後平均14.5点となり、前後間に有意差がみられた(P<0.0001)。
男女別では男性の見学前16.4点、見学後14.6点で、女性は見学前17.5点、見学後14.4点であり、男女間に不安の差はないと判断できる。
男女年代別の変化では、65歳以上の女性のみ、見学前19.6点、見学後14.3点と有意差が見られた(P<0.05)。
手術歴の有無別において、男女ともに手術歴無し群では男性は見学前16.9点、見学後14.8点、女性は見学前16.9点、見学後13.8点であり、有意差が見られた(P<0.01)。
2)術後アンケートについて(回収率88%)
手術室見学の内容について「わかりやすかった」と答えた患者は81%(36名)「むずかしくてよくわからなかった」と答えた患者は5%(2名)、その他9%(4名)、無回答5%(2名)であった。
見学後不安の変化はありましたかの問いに「不安が減った」と答えた患者は66%(29名)で「不安が強くなった」と答えた患者は7%(3名)「不安は変わらない」と答えた患者は20%(9名)、その他2%(1名)、無回答5%(2名)であった。
手術室見学の今後の実施に関して「したほうがよい」と答えた患者は84%(37名)「しないほうがよい」と答えた患者は0%、その他16%(7名)であった。結果的に見学に関して否定する回答は無かった。
 4.結論
1)手術室見学は手術前患者の不安の減少に効果がある。
2)手術室見学は今後も実施したほうが良い。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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