日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1N06
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一般演題
効果的な術前訪問を目指して
入院前にパンフレットによる情報提供を試みて
長谷 美幸中間 希伊藤 加代子
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抄録

<はじめに>
近年、手術看護において術前訪問が不安軽減に有効であるという認識が広まり、手術看護の一つとして、多くの病院で定着しつつある。当院においても、平成15年度より腰椎麻酔患者への術前訪問を導入した結果、術前訪問でコミュニケーションをとる事により、患者の不安が軽減されることが明らかとなった。しかし一方で、在院日数の短縮が図られ、腰椎麻酔下手術の入院はそのほとんどが、前日または当日入院であり、慌しい状況での術前訪問になっていた。そのような状況で、患者がオリエンテーション内容を充分理解できているか、麻酔や手術に関して情報を得たいという気持ちに応えられているのだろうかという疑問が残った。そこで今回、手術を受ける患者に手術室入室後の流れ、麻酔についてなど記載したパンフレットを入院する前に配布することで、患者が知りたい情報を提供でき、効果的な術前訪問が行えるのではないかと考えた。
<方法>
【調査期間】:平成16年8月23日から平成17年4月12日
【調査対象】:腰椎麻酔下の手術目的で入院し、当研究の主旨を理解し同意を得た患者25名。
【調査方法】:外来で腰椎麻酔による手術が決定した時に、外来看護師よりパンフレットを配布。患者入院後、術前訪問に行きAPAISを含むアンケートを実施。そして平成15年度のパンフレット非配布群のAPAISデータと比較した。
<結果>
 データを比較したところ、平成15年度の術前訪問のみを行なった群は、オリエンテーション前の情報スコアは平均5.4点であったが、平成16年度の入院前にパンフレットを配布した群は4.8点に下がった。また、オリエンテーション後は平成15年度では4.9点であり、平成16年度は4.4点となった。APAISの情報スコアは5点以上で患者は多くの情報を知りたがっていると解釈される。平成15年度の術前訪問のみの群では、術前訪問の前後で、患者は多くの情報を知りたがっていると解釈されたが、平成16年度のパンフレット配布群では術前訪問前より5点を下回り、さらに術前訪問後にはそのスコアがより下がった。 パンフレットを配布するだけではなく、術前訪問時に補足説明や担当看護師とのコミュニケーションを図る事で不安の軽減につながり、その結果患者の情報要求ニーズにも応えられたと思われる。
<まとめ>
1、手術前に情報を求めている患者にパンフレットが役立つ事が分かった。
2、パンフレットと術前訪問を組み合わせる事で、手術・麻酔に関する理解をより深めることができ、不安軽減に役立つ。
3、手術看護は手術を決定した時点から始めることが望ましい。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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