日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F01
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一般演題
当院人間ドックにおける要精検・要治療者の追跡調査結果
紹介状導入前後の精検受診率の比較とアンケート調査の結果から
伊藤 江里権田 ちなみ渡辺 由夏五味 操荻原 園子中川 佐和子
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抄録

《目的》
当院人間ドックの受診者数は、年間約2300_から_2400人であり、その内60_から_70%が「要精密検査=D」・「要治療=E」の判定を受けている。この方々の受診後の経過について、毎年追跡調査を実施し県厚生連本所へ報告している。これまでの調査は、人間ドック受診1年後(報告期限)に行なっており、調査報告のための追跡となってしまい、本来の目的である「D・E判定者への継続的な経過観察と受診勧奨」が果たされていなかった。
そこで、追跡を確実に行い、受診率を向上させる事を目的とし、紹介状の導入と受診未確認者へのアンケート調査を実施した。
《対象・方法》
1) 精検受診率の比較検討
調査期間:H14年4月_から_H16年12月まで
A群)紹介状導入以前のH14年度要精検(以下D・E判定とする)1430件
B群)紹介状導入後のH15年度D・E判定1543件。内、315件(20.4%)に紹介状を渡した。
A)・B)両群間の精検受診率を比較した。 尚、当院受診者は全て「受診者」とした。
2) アンケート調査 
調査期間:H16年10月26日_から_12月1日
対象:H15年度精検受診未確認者490名
内容:(1)紹介状の有無、(2)精検受診の有無、(3)未受診の理由、(4)紹介状による受診のし易さ
 尚、アンケートがきっかけになり受診した者は「未受診」とした。対象者には掲示にて研究することを告知した。
 《結果》
1)A群:H14年度D・E判定1430件中、精検受診870件(受診率60.8%)と、B群:H15年度D・E判定1535件中、精検受診1037件(受診率67.6%)を比較すると、B群の精検受診率が有意に高かった。
2)アンケート配布490名、回収224名(回収率45.7%)。(1)紹介状の有無については、「あり」52名、「なし」130名、無回答42名であった。 (2)精検受診の有無については、「紹介状あり」52名中、受診40名(76.9%)、未受診12名(23.1%)。「紹介状なし」130名中、受診56名(43.1%)、未受診74名(56.9%)で、紹介状ありの精検受診率が有意に高かった。 (3)未受診の理由としては、「自覚症状がなかった」30%、「その他(知らなかった、毎年ドックでみている、等)」21%、「忙しかった」20%、「忘れていた」14%、「これから受診予定」13%、「紹介状を無くした」2%であった。 (4) 紹介状があった方が受診し易いかについては、「はい」66.3%、「いいえ」10%、「どちらでもない」23.8%で、「受診し易い」が有意に高かった。
《考察・結論》
H14年度とH15年度の精検受診率は、紹介状を導入したH15年度の方が有意に高く、アンケート調査からも、「紹介状あり」の精検受診率が有意に高かったことから、紹介状の導入が有効であったと言える。また、アンケート回答者の6割以上が「紹介状があった方が受診しやすい」と答えていることから、今後は、人間ドック当日に、精検受診予約を取れなかった者全てに紹介状を渡すことが、更なる受診率向上に繋がると考える。一方、自覚症状が無い場合に未受診が多い、という点にいかにアプローチしていくかが今後の課題である。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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