日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2H08
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一般演題
術後早期の骨折を来たしたLocking humerous spoon plateの1例
中村 恒一谷川 浩隆最上 祐二君塚 康一郎
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キーワード: 上腕骨近位骨折, 合併症
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抄録

今回われわれは、術後早期の骨折を来たしたLocking humerous spoon plateの1例を経験したので報告する。症例は78歳女性で、平成16年6月17日交通事故にて受傷した。同日当院に救急搬送となった。現症:身長158cm、体重58kg、右利き。右肩の腫脹痛みあり。Neurovascularの損傷は認められなかった。初診時レントゲンでは右上腕骨の頚部骨折、および骨幹部の粉砕骨折が認められた。受傷後1日に全身麻酔下にて、Delto-pectoral approachからのLocking humerous spoon plate(LHSP)による内固定を施行した。受傷後4日の時点でベットサイドにて右肘をぶつけるようについてしまい、以後右上腕の腫脹、痛みが増強。レントゲンにて右上腕骨遠位骨片に縦方向の骨折線が認められた(図表1)。骨折線は遠位2本のロッキングスクリュー刺入孔を通って縦に走っていた。髄内釘による再手術を施行し、その後の経過は良好である。
【考察】上腕骨近位骨折に対する従来型のプレート固定システムは、スクリューの把持力を用いた、プレートと骨片間の摩擦力でプレートと骨片を固定するものであり、皮質骨の薄い上腕骨頚部、特に骨質の低下している骨粗しょう症患者では強い固定力は期待できない。 Locking compression plates(LCP)は従来型のプレートと比較し、プレートとスクリュー間がロックしてAngular stabilityを有することにより、骨粗鬆症患者、粉砕骨折患者でも強い固定力を得ることが可能である。今回のような術後の外力が従来型のプレート固定で起こった場合はスクリューのLoosningによる骨片の偏位を起こしたであろう。LCP固定ではAngular stabilityを有することにより、外力が直接骨全体にかかり今回のような縦骨折を起こしたものと考えられ、それだけ強い外力であったと思われる。最近の報告では、スライドに示すようなLCPプレートの合併症も散見されている(図表2)。またLocking screwではスクリューの刺入方向に自由度がないため方向を誤りやすいというDemeritも指摘されている。
【まとめ】術後早期の骨折をきたしたLocking humerous spoon plateの一例を経験した。LCP固定ではAngular stabilityを有し、骨粗しょう症患者でも強い固定力を有するが、術後の強い外力に対してはスクリュー刺入部での骨折を起こすことがある。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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