日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2I08
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一般演題
当院施設ドックにおける骨密度測定の現状と問題点の検討
堀口 睦美我妻 武士大原 秀樹堀井 修
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抄録

1.はじめに
現在、日本における骨粗鬆症患者は1000万人を越え、社会の高齢化と共にその数は増加している。骨粗鬆症により一度脆弱化した骨を健常骨に回復させることは極めて困難であり、また骨粗鬆症にともなった骨折はQOLを著しく阻害する。そのため、検診などによる骨量減少の早期発見と治療が重要となる。当院では施設ドックにおいて、平成7年より橈骨測定による骨粗鬆症検診を行ない、精密検査で腰椎の測定を行なってきた。しかし、検診結果と精密検査結果に大きな差がある例が若干みられた。今回、検診受診者の年齢とBMD値の傾向、精検受診率について、精検受診者については橈骨、腰椎のTスコアを比較し、そのうち差の大きかった例について検討を行なった。また、外来受診者の腰椎、大腿骨のTスコアの比較を行なった。
2.対象及び方法
対象は、平成13年4月から平成16年3月までに当院施設ドックで骨粗鬆症検診を受診した女性5893名とした。
 橈骨BMD測定はDCS-600(アロカ社)を使用し橈骨遠位1/3部位を測定した。腰椎BMD測定はQDR2000 (Hologic社)を使用した。
3.結果及び考察
検診受診者数を5歳ごとの領域に分け比較すると、50歳以上55歳未満が多く、30歳未満と75歳以上が極端に少数であり、全体の平均年齢は52.8歳であった。この偏りは、当院の骨粗鬆検診が施設ドックと併用しているためと考えられる。各年齢に対する橈骨の平均BMD をグラフにすると、これまで報告されているのと同様に、40代までにピークを迎え、後10年間ほどで急激に減少し、そのあと加齢と共に緩やかな減少を示している。
当院ではTスコアが80%以下の受診者を要精検としており、今回1144名が対象であったが、その半数近くを平均BMDが基準値を下回る60歳代後半の受診者が占めていた。精検受診者は106名で受診率は約9%と低い値であった。原因として、結果通知に記載されるZスコアに対する誤った認識と、『骨量減少』に対する危機感の弱さが考えられ、我々医療従事者サイドからの情報の提供と、よりいっそうの働きかけが必要と思われる。
 精密受診者106名のうち、43名が腰椎Tスコアで80%以上を示した。このうち特に高値を示した19例について検討を行なった。19例中12例において、現在までに骨量の変化に寄与する疾患や治療を受けていることがわかった。また5例において椎体の変性が認められ、その平均年齢は約61歳であった。このように多くの因子が腰椎BMDに影響を与えており、問診時の確認で、不必要な検査を省いたり、より的確なアドバイスが出来るのではないかと考えられた。
当院では精密検査で腰椎の測定を行っているが、従来、高齢者に対する腰椎測定は問題があるとされていた。今回の検討においても60歳代から腰椎の変性は見られており、他部位の評価も必要と考えられた。同装置による腰椎、大腿骨のTスコアは相関係数0.656と有意な相関が得られた。大腿骨骨折は骨粗鬆症において頻度が高く重篤な合併症であり、QOLを著しく阻害する。このような部位の骨量減少を見逃さないためにも、問診でBMDに影響を与える因子の高い受診者に対しては腰椎、大腿測定の併用による総合的な判定が必要と考えられた。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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