日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2J01
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厚生連施設の臨床化学検査における施設間差
岡田 元川村 真由
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抄録

【はじめに】臨床検査の標準化活動は県単位、地区単位等で行なわれているが、全国厚生連としての組織的な活動は行なわれていない。標準化されつつある臨床化学部門の検査結果について、厚生連施設の施設間差実態がどのようになっているか、検討したので報告する。
【方法】平成16年度日本臨床衛生検査技師会精度管理調査(日臨技精度管理)に参加した厚生連施設の施設間差、測定方法・測定機器採用状況等を調査し、全国集計と比較した。
【結果】参加状況:日臨技精度管理調査の化学検査項目に参加した厚生連施設は90施設で、全国参加施設2662施設の3.4%をしめている。厚生連施設の参加内訳は、一般病院19施設、総合病院63施設、検査所1施設、診療所2施設、健検診センター4施設、療養所1施設であり、300床以上の施設が50施設をしめている。厚生連以外の公的医療機関の参加は、都道府県189施設、市町村407施設、赤十字74施設、済生会48施設、国関係148施設、社保関連が70施設となっている。
施設間差:日臨技では統計数値を算出する前に、極端値を除去し±3SD 2回反復切断を行なっている。この反復切断に除去された厚生連施設が最も多かったのはクレアチニンの試料11で3施設の除去であった。2施設除外された項目は、直接ビリルビン、カルシウム、総コレステロールであった。全国施設の除外施設割合と比較すると、どの項目でも少ない割合だが、反復切断されるケースは、記入ミスか、測定値が大きく外れている施設なので1施設も除外されないのが望ましい。厚生連施設のなかでは、多くの項目で除外されているような施設は認められなかった。
反復切断で除外された施設も含めて厚生連施設の集計を行なった結果、C.V.%が全国集計よりも大きかった項目はカルシウムだけであった。試料11で10.2%、試料12で7.3%と全国集計の8.0%、6.4%と比較して大きくなっている。今回の日臨技試料はカルシウム測定の酵素法とキレート法では反応性が異なり、ヒト検体を測定したときよりも大きな測定方法間差が認められている。そのため項目単位で集計を実施すると測定方法が分散するほどC.V.%が大きくなる。全国的に酵素法は8.3%の採用率であるが、厚生連では20.4%の施設が採用しているため、項目全体の収束率が全国よりも悪い結果となっている。また除外施設の多かったクレアチニンも試料11でCV%が12.0%と収束率が悪い結果であった。全国集計にはJaffe法が含まれ収束率が悪くなっているが、厚生連では全ての施設で酵素法を採用しているため、本来はもっと収束しても良いと思われる。その他の項目では、全国の反復切断後のC.V.%と同等以上とかなり良好な結果であった。
酵素項目のJSCC採用率:ASTとALTでは全ての厚生連施設でJSCC標準化対応法が採用されている。しかしCKとALPで1施設、γGTで3施設、LDで9施設がJSCC以外の試薬を使用している。全国普及率と比較すると同等であるが、標準化を視野にとらえた厚生連組織活動等を実施する機会があれば、普及率向上につながると思われる。
【まとめ】組織的な活動を実施していない厚生連の施設間差は予想以上に小さく、あと一押しで標準化が達成されると思われる。現在の医療状況を考えると、組織に関係なく臨床検査の標準化は達成されるべきであるが、標準化に必要なモノの多くは、単独の施設で購入するには高価な製品が多い。そのため標準化に対応できる施設と、できない施設の格差は大きくなりつつある。このような高価なリファレンスを厚生連で購入し、厚生連で統一された管理血清に目標値を設定することによって、少ない労力で厚生連の標準化が可能と思われ、そのような組織的活動が望まれる。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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