日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2J03
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秋田県厚生連9病院の臨床検査基準値標準化について
佐々木 司郎
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抄録

(はじめに)臨床検査基準値は医療施設毎に健常者を選定し、分析値を統計処理して大略その集団の平均値±2SD値を求めて設定している。近年、臨床検査測定値の標準化が進み、医療施設間の検査測定誤差が収束されてきていることから基準値についても標準化の必要性が叫ばれ、現在、各県単位あるいはグループ単位でその為の作業が進んでいる。基準値標準化のメリットは多岐にわたるが、どこの医療施設で診察を受けても同じ基準で判定されることにより無駄な検査が行なわれなくなり、受診者の負担が減少すると同時に国の医療費削減にもつながることが大きなメリットとして取り上げられている。厚労省でも人間ドックなどの判定基準を統一するべく作業を進めることを明らかにしている。秋田県厚生連は県下に地域バランス良く9病院を有し、秋田県の地域中核病院として活動している。これまでは同じグループ病院ではあるものの臨床検査分析に関しての相互交流はなかった。しかし、秋田県農村医学会に組織された研究班活動をきっかけに臨床検査基準値の標準化を達成し得たので、その経緯について報告する。
(方法)精度管理を通じて9病院間の測定値を標準化し、基準値標準化につなげる。
(結果)平成13年から15年度にかけて秋田県農村医学会に「人間ドックの検診成績から見た秋田県民の健康状態に関する共同研究班(班長:大淵宏道)」が組織され、その活動の中で病院間の臨床検査値と共に基準値のバラツキが問題視された。そこで臨床化学検査、血液検査について人血液を用いた精度管理を3回にわたって行なった。その結果、(1)病院間の測定値は高い相関を有し、補正することにより9病院の人間ドック成績を統一視することが可能であること、(2)基準値を統一視することにより各項目の異常率が収束すること、などが明らかになった。すなわち、各病院の基準値は設定時のいわゆる「健常者」の選択がまちまちであり、結果としてそのことが人間ドック成績の異常率差拡大の要因になっていることが示された。これらのことから基準値標準化の必要性を痛感し、厚生連臨床検査技師長会議の中に「臨床検査測定値・基準値等標準化委員会」を組織した。この活動を進めている過程で秋田市内5施設のグループで同じ活動がなされており、福岡県医師会などが設定した基準値と同じ数値を採用する方向であることが判った。同基準値は健常者設定などを厳しく管理した上で設定しており、その数値は全国的に複数の県で検証され、その妥当性が評価されている。測定値統一化のため福岡県で使用しているプール血清を入手し得たので2病院で分析を行なったところ測定誤差は許容範囲内に収まっていることが確認された。そこで市販コントロール血清を用いて9病院間の精度管理作業を行ない許容誤差範囲内に収まっていることを確認した。これにより福岡県医師会設定基準値を採用する事を決定した。また、血液検査基準値については慶應大学グループ病院で採用されている基準値が実用的であると判断し、さらに9病院のうち8病院で同じメーカー機種を使用していることから精度管理も問題なく出来ることから同基準値を採用することとした。
(結論)以上の過程を経て平成17年4月より秋田県厚生連9病院において統一基準値採用に至った。今後、本学会を通じて全国厚生連規模で基準値標準化が達成されることを希望する。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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