日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2K08
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一般演題
ヨード造影剤投与の際ショック状態に陥った症例について
鶴巻 章
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抄録
(はじめに)
ヨード造影剤は非イオン性が主流となった現在、安全性に対する信頼度は高く、日常の放射線診療において広く用いられている。
しかし、少ないながらもヨード造影剤による副作用発現は報告されていることから、当院において1998年より副作用調査およびインフォームド・コンセントを継続している。
今回、調査の途上において、ショック状態に陥った症例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。
併せて調査開始から2004年末日までの調査結果を報告する
(症例)
氏名SI・76歳・男性
病歴
99 4月 左尿管癌のため、左腎尿管全摘
7月 膀胱癌出現
04 2月 左頸部鎖骨上腫脹
       移行上皮癌であったことから尿路系からの転移と診断
(経緯)
04 3月25日
    転移巣検索を目的として胸腹部CTを施行。
    造影剤100mlを3ml/secで注入。
検査終了後、喉頭不快の訴え。
血圧低下(60mmHg)
硫酸アトロピン・ソルコーテフを投与。
意識レベル低下。けいれん発作
(処置室に移動)
カタボン投与
心室頻拍(VT)発現を確認。
除細動器用意。
数分でVT回復。
血圧回復、意識レベル回復
(考察)
今回の症例は造影剤投与後に主に循環器系の症状を呈したものである。
これについて当初は造影剤の刺激により、冠動脈のれん縮を来たしたのでないかと思われた。
しかし心疾患の既往があるため、虚血性心疾患の発作が偶発的に起きたという可能性も否定できない。
また、頸部リンパ節の腫脹によって迷走神経が圧迫され、迷走神経反射を起こした可能性も指摘された。
この様に、造影剤以外の因子が関与している可能性は含みつつも、造影剤投与直後にショック状態に陥ったという事実は動かしがたく、我々放射線業務に携わる者としては造影剤による副作用との認識をもつべきであろう。
現在、副作用発現を確実に予知あるいは防止する方法はないとされるが、問診等によるリスクレベルの確認が重要とされる。当院では造影剤投与に先立って、リスクレベルのチェックはもとより、より詳しい説明を加えるためにインフォームド・コンセント(IC)と造影剤投与の副作用発現調査を実施している。
それによって患者さん側に十分な説明がなされると同時に、職員にも造影剤の副作用に対する正しい認識を定着させる一助となっている。
1998年の開始より、重篤な副作用の発現例は2例目である。
即発性副作用発現率1.28%(2,6953例中)(1998-2004)  文献 3.13%(片山)
遅発性副作用発現率4.28%(25,153例中)(1998-2004)  文献 8.00%(吉川)
また、副作用発現に備えて救急体制を備えておくことも求められるが、当院ではこれについても緊急時に即応して人員を召集する体制がとられており、今回の事例の際には、これが有効に機能したことによって、迅速な対応がなされたものである。
今後も造影剤使用の際にはその利点を活用すべく最大限の診断情報を提供しながら、不測の事態に対して十分な注意を払って行く所存である。
(結語)
・X線造影剤投与後にショック状態に陥った症例を経験した。
・迅速に対応し、大事には至らなかった。
・造影剤投与に際して、問診等のリスクマネージメント、および副作用発現に備えた体制づくりが必要であると考える。
(参考文献)
小塚 隆弘 造影剤要覧 21版 日本シェーリング 1999
片山 仁 造影検査実践マニュアル  医科学出版社1999
Yasuda R :Delayed Adverse Reactions to noionic monomeric contrast-enhanced media.Invest Radiology33,1:1-5,1998
著者関連情報
© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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