抄録
本稿は、アメリカの大統領選挙キャンペーンの研究として、コロナ禍で行われた2020年大統領選挙キャンペーンを例にとり、オンライン技術を活用した選挙キャンペーンがこれまでとどのように違うのか、あるいはどのような点がこれまでと変わらないのか、という点を検討した。その結果、コロナ禍で伝統的な「地上戦」に制約が大きい中、民主党のバイデン候補、共和党のトランプ候補の両陣営ともオンライン技術を駆使した選挙キャンペーンを展開せざるを得なかったことは明らかである。とりわけ感染拡大のリスクに慎重なバイデン陣営は、長い選挙戦の多くをオンライン重視で戦った。しかし、コロナ禍だから仕方なくそうしたというだけでなく、利点も大いにあった。一方、トランプ大統領やトランプ陣営は、ソーシャルメディアなどで「郵便投票は不正選挙になる」「選挙は盗まれた」という誤情報拡散キャンペーンを展開した。トランプ大統領のソーシャルメディアの発信力は強力であり、オンライン上での誤情報・偽情報の拡散が2020年大統領選挙キャンペーンにおいても深刻な問題となった。