日本農村医学会学術総会抄録集
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第54回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1C05
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一般演題
農家における草刈機の使用実態に関する調査から
末永 隆次郎百瀬 義人
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抄録

[はじめに]全共連の委託研究「農機具による事故災害の実態とその予防策についての研究]において、平成12年度の全国的な調査の結果、農業機械が関係するものは3,750件で全体の約35%を占めており、特に草刈機によるものが686件で最も多くなっていた。草刈機による事故災害を如何に減らすかが大きな課題となっており,農家で使用している草刈機の種類や使用状況等を明らかにし,事故災害予防策を検討した。
[調査対象及び方法]福岡県の筑後地区で,施設園芸栽培に従事している専業農家を対象に,草刈機の種類や刈刃の状況,使用時の防護具の有無,圃場での草刈機の使い方,ヒヤリ・ハット体験などについてのアンケート調査表を配布し,334名(男258名,女76名)から回答を得た。今回、この中でこの1年間に草刈機の使用経験のある290名(男251名,女39名)について解析した。
[結果]草刈機による事故経験者は290名中40名(男36名,女4名)で,棒状・肩掛け式の草刈機を使用中が60%を占めていた。年間における草刈機の使用状況は、男では11.7日間,42.2時間,女では4.4日間、16.2時間で,男女とも1日当たり4時間弱の使用であった。草刈機の種類は,棒状・肩掛け式が77.2%,背負い式が18.6%などであった。刈刃としては,回転刃の使用が86.2%を占めていた。回転刃の種類は,チップソー型が全体の66.2%,二枚刃が12.4%,二枚刃とチップソー型が7.6%などであった。因みに,事故災害経験者40名の事故時の使用回転刃の種類は,二枚刃が14名,チップソー型が2名,四枚刃と八枚刃がそれぞれ1名,不明(記入なし)が22名であり,傷害部位は足・足趾が最も多く、次いで顔・目,手・指などであった。事故の原因としては,記載のあった24名の中で,「石が飛んできて」というのが16名と最も多かった。草刈作業時の防護対策の実施状況は、顔面の防護を「いつも」している者は24.8%、[特にしない」者は54.1%,下肢の防護では,[いつも」している者は3.8%であり,「特にしない」者は74.1%であった。
 安全確認のための作業前の草刈場の下見では,「特にしない」が60.3%であり,「時々」ないしは「必ずする」が12.8%に留まっていた。雨後や朝露の残っている時間帯での作業は,「特に気にせずにする」が46.6%,「避けるようにしている」が11.4%であった。次にヒヤリ・ハット体験について,「草刈中,キックバックを起こして」が57.2%あり,そのうち石や空き缶に当たってキックバックを起こしたという者が70%以上であった。「草刈中,石や空き缶,針金などが飛んできて」が61.4%,「草刈中,足を滑らせて」が41.4%,「路肩の草刈中,接近する車に気付かずに」が37.6%などであった。
[まとめ]今回の調査では,事故経験者は棒状・肩掛け式の草刈機で回転刃として二枚刃を使用している者が圧倒的に多いが,チップソー型でも事故を起こしていた。事故原因としては草刈中に石や空き缶が飛んできて負傷しており,普段の作業時における下肢や顔の防護が不可欠であることを示唆している。事故には至っていないヒヤリ·ハット体験でも“草刈中,石や空き缶,針金などが飛んできて”が最も多く,作業前における草刈場所の下見が必要である。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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