日本農村医学会学術総会抄録集
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第55回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2E12
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保健ボランティアの国際比較研究
出浦 喜丈
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抄録

<研究目的>途上国においても、保健ボランティアは、地域において保健活動を効果的に実践するために、不可欠である。わが国における旧八千穂村の衛生指導員や須坂市の保健補導員は、保健ボランティアの典型といえるが、現在、多くの途上国で、保健ボランティアの組織化とその活動の強化が試みられている。わが国の保健ボランティア活動の経験を参考に、途上国における保健ボランティア活動を強化する目的で、国際的な保健ボランティアの比較対照研究をおこなった。
<研究方法>日本、フィリピン、ベトナムで、保健ボランティアに関する基礎調査をおこなった。旧八千穂村の衛生指導員、須坂市A地区保健補導員、フィリピンでは、ルソン島コルディレラ地域の2州3自治体の村保健ボランティア(BHW)を対象に、64項目からなる質問表を用いた基礎調査をおこなった。調査対象者351名中342名(実施率97.4%)で調査を実施した。(表1、図1)
<結果>八千穂村の衛生指導員は全員が男性、須坂市保健補導員は全員が女性で、いずれも各部落(区)から推薦されて活動している。活動内容は、検診など行政の保健サービスに対する協力支援もしているが、自己研修や学習活動などを通じて主体的な活動を求められている。これに対して、フィリピンのBHWは、国の制度として導入されている。調査をした3地区のBHWは、大半が医師のいる診療機関や病院から4-8km以上離れたバランガイ(村)保健センターを中心に、栄養、母子保健、FP/RH、IEC/健康教育, 感染症などの分野で活動している。BHWの大半が女性で、平均年齢45才、平均任期は12年で、日本より長く活動しているが、活動に必要な器材不足や研修機会が少ないなど、改善すべき余地が大きい。ベトナムやラオスでも保健ボランティアが存在しており、“健康な村つくり運動”などの地域活動に参加している。これらの途上国における保健医療の現状と保健ボランティア活動について研究結果を報告する。
<考案と結論>
(1)フィリピンでは、BHWの活動の90%が、町保健センターの保健サービスプログラムに関係している。したがって、町保健センターとBHWの関わり方を工夫し、日常的な連絡、協議や研修など通じて、保健センターや病院との協力体制を強化する必要がある。
(2)八千穂村の全村健康管理のような、地域と住民の参加性が高く、地域や保健ボランティアのインセンティブになるプログラムを計画実施することが重要である。
(本研究は、国際保健医療協力研究:途上国における社会開発技術・地域保健システムの強化に関する研究班の平成17年度分担研究として実施された。)

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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