日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2B12
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一般演題
DPC導入後の数字の変化
山口 悦男岩渕 規男佐久間 泉佐藤 尚武塚田 昌明小倉 純佐川 義久鈴木 義育出沼 健一鳥羽 基文
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キーワード: DPC導入
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抄録

(はじめに)
 当院は平成17年にDPC調査協力病院に応募し、平成18年6月よりDPC対象病院として稼動している。DPCの目的は、診療内容の標準化を行っていく事であるといわれている。各病院から提出された診療データは厚生労働省より公表され、第三者が取り出せる形となった。診療の質に関する指標や医療経営状況を比較することにより、質の改善を行っていく事が出来る。
当院も今後は他病院との比較の為ベンチマークに参加の予定ではあるが、まず、第一歩として我々医事課職員の立場から、DPCが稼動し6ヶ月が経過して「収支に関する数字で見えてきたもの」を調査し検討したので報告する。
(方 法)
 当院の現状を把握する為、6月から11月の退院患者症例を対象とし、DPCの該当率及び手術件数と収支の関係の分析を試みた。その他の分析として、DPCと出来高点数での比較、MDC群別のマイナスレセプトの発生件数、外来単価と入院単価の変化、平均在院日数、病床稼働率、入院・外来査定の推移についても分析を行った。
(結 果)
 DPC該当率は概ね9割が該当し、病名等何らかの理由で少数症例が生じ1割は出来高となっている。収支が手術件数の増減に比例変動していることがわかった。また、従来の出来高制に比べ、DPCを導入した場合、8.2%の伸び率を示し収益性が高いこともわかった。マイナスレセプトが多いMDCは新生児・小児が同群該当レセプトの3割を超え、ついで内分泌、循環器、血液、外傷の順で占めている。単価は17年度との比較で、外来は特に変化は見当たらないが、入院はDPC導入後の方が高い結果になった。平均在院日数はDPC導入に伴い短縮した。しかし、病床稼働率は、逆に低くなっている。DPC該当レセプトの保険査定は殆んど無く、1割の出来高算定レセプトに対するものと、DPC導入以前分の保険者査定に対するものである。結果、査定件数・査定金額は、外来が入院を逆転する結果になった。
(考 察)
平均在院日数は、以前から14日前後と比較的短かったが、導入後はDPCの性格を受けて12日台へと短縮されている。これは、さらに病棟稼働率の低下へと影響を及ぼしているとの結果を得ている。今後は、病病連携、病診連携を更に強化して新入院患者の受け入れ拡大、退院患者の転院機関の確保が重要となる。
収益性については、DPCの方が高い数字が出ることがわかった。しかし、MDC群別に見てゆくと、新生児・小児医療を先頭に検査やレントゲン等の多くの医療資源を投入したり、高価な注射薬剤を使用する分野でマイナス率が高い事も分かった。
現在では、DPC対象病院、準備病院の増加に伴い、それらの病院の診療データを分析したり、病院間の比較を可能にするソフトが出てきている。今後はベンチマ-クに積極的に利用し、クリティカルパスの適正化を図ると共に、診療情報管理士との関係を密にして事務職員のコ-ディング能力の向上、強いては医療の質の改善・標準化に努めていきたい。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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