日本農村医学会学術総会抄録集
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第56回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2D13
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一般演題
閉じこもり予防教室における栄養改善活動の取り組み
中村  あつ子河合 紀嘉村田 幸紀三浦 よね子鈴江 妃佐子倉島 恵美山内 真智
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抄録

緒言〉あつみの郷は、介護予防事業として一般高齢者を対象とし閉じこもり予防教室を5地区・月2回ずつ開催している。長寿食の秘訣は「粗食」と思われがちだが、ねたきりを予防するには動物性食品や油脂類の摂取が必要である。今回、教室利用者を対象に栄養改善活動を実施し、効果をあげたので報告する。
〈活動期間〉H18年4月~H19年3月迄の一年間(参加平均年齢78.95±7.95歳)
〈方法〉老化を遅らせる食生活指針あつみの郷版の読み合わせ及び体重測定(各地区月1回)・低栄養予防自己チェック(年3回)・食事摂取調査実施後及び個別指導(年3回)・体力測定(10m歩行・開眼片足立ち時間)を介入前後で調査した。一年間通して参加された方を対象に効果を検討し、参加者全員に活動によるアンケートを実施した。
〈結果〉活動の平均参加者は一月当たり計42.73人。食事摂取調査を4月・9月・3月と三回行い、その都度個々に助言指導を行い、その結果、蛋白質・乳製品・野菜・油脂が増加し、穀類は減少、本来の目的通りの摂取効果が伺えた。意識調査でも、一件間で積極的に食べるようになった食品として蛋白質類が合計23ポイントと最も高い。BMIは夏場に暑さから食欲低下がみられ、体重減少者目立ったが、食欲低下時の指導を行い徐々に回復し、一年間で22.15→23.23へと増加した。低栄養状態予防自己チェックは16.7%→10.3%と食習慣を中心に状態が改善した。活動参加による健康上の変化としては、風邪をひきにくくなった方28.9%、治療薬の減少した方17.8%であった。体力測定を実施し、10m歩行は全体では時間が短くなっているが、低栄養状態自己チェックで「動かなくなった」と回答した方は歩行時間が長くなり、開眼片足立ち時間は全体・動かなくなった方とも介入前と比べ85.07%・83.19%と共に低下した。高齢者は歩行に比べ筋力バランスが明らかに低下することがわかった。今後、利用したいサービスとして食事の勉強会・食事会等が全体の半数近く上がった。食事に対する意識が高いことが伺える。
〈まとめ〉今回対象者が一般高齢者のため、アルブミン値の比較はできなかったが、アルブミン値は測定時期・体調等にも左右されるため、栄養状態の把握は体重と摂取内容、特に蛋白質の摂取量が顕著に増加していることから、参加者全体でのBMI増加は栄養状態が改善されたと考察される。一方で運動能力は低下することがわかった。特に「動かなくなった」と自覚する人は明らかである。よって、ねたきり予防には栄養改善と運動機能向上の両方の活動を合わせて行なうことが最も有効と思われる。

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© 2007 一般社団法人 日本農村医学会
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