抄録
当病棟において、開腹手術後の患者は、早期離床を目的とし、1病日に持続導尿カテーテル(以下フォーレとする)を抜去していた。しかし、過去一年間の94名の手術患者のうち、38%の患者が一過性の排尿障害と判断され処置を受けていた。
今回看護記録や看護師へのインタビューの中から術後の排尿に関する情報を分析した所、患者の状態やアセスメントが不足していたことが明らかになった。安易にフォーレを再挿入することは、患者にとって身体的、精神的に重大なストレスとなり、感染のリスクも相まって手術後の患者の回復を遅らせる要因となる。
そこで明らかになった問題点を基に術後の排尿ケアのアルゴリズムを作成し、13例の症例に使用した。その結果、以下のような事が分かった。
_丸1_ 術後一過性の排尿障害を起こした患者の要因調査を行った
_丸2_ 男性患者、硬膜外PCAなどとの一定の相関は見られたが、はっきりとした根拠は得られなかった
_丸3_ 記録面から看護師のアセスメント不足が明らかになった
_丸4_ 排尿ケアアルゴリズムを用いケアを行った結果、硬膜外PCA挿入中に自排尿がみられた患者は13人中12人であり、硬膜外PCAが必ずしも排尿機能に影響しないと考えられる
_丸5_ 今回の研究では、アルゴリズム使用症例数が少ないため、今後のデータ集積が必要である
_丸6_ _丸5_と同様に、術後一過性の排尿障害に関する要因分析のデータを集積していく必要がある
今回の研究を通じて、開腹術後の一過性の排尿障害に関し看護師の見識を統一することで、患者に与える苦痛を少なくし、スムーズな自排尿への排尿ケアを方向付けることができた。術後の一過性の排尿障害に関しては先行研究が少なく、薬剤との関連のデータも不足している。
今後更にデータを集積し、アルゴリズムを変更していくことで、術後ケアの改善に努めていきたい。また今回の気づきに限らず排尿ケアに留まらないより良い術後看護を目指していきたい。