日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: workshop1-2
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ワークショップ1
認定看護師として働く楽しさを広めるために
松本 俊子
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抄録

〈はじめに〉 先日、新卒看護師から「認定看護師を目指しているのでキャリアアップの方法を教えて欲しい」という意見があった。1997年、認定看護師が誕生して10年が経過し知名度があがったと実感している。今回は「マグネットホスピタル」において、認定看護師がどのように貢献しているかについて、当院の取り組みを報告する。
〈現在の取り組み〉 当院では専門看護師1名、認定看護師9名が「リソースナース」として活動している。2007年に8名となったことを機会に、リソースナースの力を集約し組織化する必要性を感じ、1年の準備期間の後、2008年「専門看護師・認定看護師の会」(以下、会とする)を設立した。現在、以下の3点に力を入れて取り組んでいる。
1. リソースナースの組織化
 会の組織化にあたっては準備期間中、組織化についての研修会に参加し、先駆的に会を設立した施設の運用状況について調査した。これらを元に看護部長と会員で十分に話し合い、院内及び看護部での会の位置付けを決定した。また、会の規約を作成し、同時に、これまでケースごとに対応していた教育講演など、外部の仕事に関する依頼の受け方の運用規約を制定した。そして、これまで個人の裁量に任されていた職務記述書や活動報告書、学会や研修会参加の申請書などの書式化とこれを開示することで、活動の透明性を図った。
目標管理とこれに伴う育成面接については、病棟や外来に所属する兼任者に対しては、当該所属長が行い、看護部所属の専任者に対しては、所属長でもある会長が行うことにした。しかし、専門分野における活動の幅を広げるための具体的な企画の話し合いなどは、会員が直接、看護部長と話し合う機会をもてるようにした。
2. リソースナースの広報
2007年の専門看護師・認定看護師の広告可能に伴い、病院ホームページや病院新聞、院内掲示ポスターなど、様々な媒体を通して広報活動を行った。院内医療スタッフに対しては、会員の顔写真に、主な相談内容や連絡方法を簡潔に記載した「専門・認定看護師コンサルテーションシステム一覧」を作成し、所属の電話の脇に置いてもらい、気軽に相談できる工夫をした。
また、2008年からは年2回の活動報告会と公開講座を企画している。活動報告会は、院内スタッフを対象に、会員が各々、一番力を入れている取り組みとその成果について発表する。そして、公開講座は、茨城県内の医療施設や看護教育施設にも参加案内をし、会員の専門分野におけるタイムリーなテーマを講演することで、最新知識の普及とともに、会の活動のアピールの場と相互交流を図りたいと考える。
3. リソースナースのサポート体制
 8年前に認定看護師1名であったときは、孤独と向き合いながら認定看護師として組織に認知してもらうことを目標に試行錯誤を重ねてきた。そして現在ではリソースナースの仲間が増え、周囲から認知されるようになった。しかしその一方で専門分野における膨大な仕事がノルマになり、また組織からも、よりよい変革のためにリーダーシップの役割発揮を期待されるようになった。これに伴い会員の悩みも多様化してきている。
具体的には、管理部門との交渉、スタッフとの協働、また会員間においても、専任者と兼任者の連携や会員相互の協力体制などにおける意識や考えの違いから、仕事を進めていく上で困難さを感じることも多くなっている。そして会員のジレンマは、管理者やスタッフなど組織全体のジレンマへと発展しかねない危うさがある。このような現状をふまえ、会員が自分の悩みやジレンマをひとりで抱え込むことがないように、会員相互及び管理部門との、報告、連絡、相談をタイムリーに行うことを意識付けている。また、先輩の会員が後輩の会員に対して、管理的な交渉の方法についてアドバイスをするなど、会員間でスーパーバイザーの役割をとることも推奨している。
〈まとめ〉 認定看護師や専門看護師といったリソースナースの働き方には、従来の看護師の働き方にはなかった「専門分野に特化した看護ケアを所属の枠にとらわれることなく組織横断的、また自律的に展開できる」という特徴がある。この専門職として自律的に活動し、自分の仕事の幅を広げられる可能性があるということは、この資格のもつ大きな魅力のひとつだと考える。
 リソースナースが求めるマグネットホスピタルは、前述した自律的な働き方ができる可能性を信じ、その職場環境を提供する努力を惜しまない組織であると考える。同時に、リソースナースが組織に溶け込み、その力量を十分に発揮できたときに初めて、リソースナースはマグネットホスピタルに貢献できたと言えるのではないかと考える。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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