日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: workshop4
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ワークショップ4
不整脈治療の最前線
家坂 義人青沼 和隆
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抄録

不整脈治療の最前線における進歩として、従来まで不整脈治療の主役であった抗不整脈薬治療に替わって、高周波カテーテルアブレーション(radiofrequency catheter ablation、CA)や埋め込みデバイスを用いた非薬物治療が主力となったことを挙げることができる。CAは、1990年以降わが国に導入され、高周波カテーテル心筋焼灼術と呼ばれ、近年、広く普及している。専用の電極カテーテルを大腿静脈や動脈から心臓内に挿入し、頻拍発生起源と確認された異常興奮発生部位や興奮旋回路上に先端電極を固定し、電極を通して高周波電流を通電して直径3mm程度の心筋組織壊死巣を形成し、頻拍の発生基盤を消滅させるカテーテル手術治療である。本治療法は外科手術と異なり全身麻酔を必要とせず侵襲が少なく、根治的治療であり治療成功後は投薬や通院などの必要がなくなり、たとえ再発した場合でも再施行が可能であるといった多くの利点を有する。 本治療法は導入以来、15年以上の実績を有し、経験を積んだ施設においては、有効性と安全性は十分に満足できるものであることが明らかとなっている。従って、とくに若年者の発作性上室性頻拍、通常型心房粗動や特発性心室頻拍に対しては、有効性・安全性も高く、第一選択の治療法として既に位置づけられている。さらに、異所性心房頻拍、心房切開手術後心房頻拍その他の非通常型心房粗動や基礎心疾患を有する心室頻拍に対しても、その発生機序については知見の十分な集積があり、3次元マッピング装置などを用いる必要はあるが、CAの高い有効性が認められ必須の治療法となっている。 現在、CAの最前線では、その発生機序が未だ十分に解明されていない、心房細動(atrial fibrillation、AF)や心室細動(ventricular fibrillation、VF)に対して、従来の発生基盤そのものを除去する戦略とは全く異なる、頻拍開始の引きがね(トリガー)を標的とする新たな戦略に基づいたCA法が開発され、その発展が推し進められている。AFにおいては、トリガーの発生起源部位が90%以上の症例において肺静脈(pulmonary vein、PV)であるとの知見から、PV―左房間伝導をブロックする目的で開発された拡大PV隔離アブレーションが、発作性AFに対する基本的CA手技として確立された。経験ある施設においては、発作性AFの根治率は90%を超えている。慢性AFに対しては、トリガーの除去を目的とした拡大PV隔離に、左房内に広く存在するAF開始や持続の基質除去を目的とした、線状アブレーションや電位指標下の領域アブレーションを付加する戦略が行われ、抗不整脈薬併用例を多く含むが、発作性AFに匹敵する有効率が認められている。発作性AFの慢性AFへの進行をくい止め、慢性AFの洞調律化の維持を可能とすることは、AF患者のQOLを改善するのみではなく、脳血栓塞栓症や心不全の発生を予防し生命予後の改善することであり、アブレーション法の確立の意義は大きい。いっぽう、VFに対しても、特発性VFあるいは急性心筋梗塞後のVFにおいて、病的プルキンジ電位を先行電位とするトリガーのマッピングとアブレーションの有効性が報告され、アブレーション治療と埋め込み型除細動器(ICD)とのハイブリッド治療が行われ、患者のQOLのみではなく生命予後の改善をもたらしている。さらにAFやVFに対するトリガーを標的としたアブレーション戦略の成功が、頻発し症状を有する期外収縮即ち、通常の心室性あるいは心房性期外収縮に対するアブレーションの適応拡大を促した。従来はもっぱら薬物治療の対象と考えられていたが、1日に10000~15000発を超える特発性例では薬物治療抵抗性例が多く、アブレーションにより根治できることの意義は大きい。 本ワークショップにおいては、先に述べた最前線における新たなアブレーションを実施しているセンター病院のパイオニアの先生方、および地域中核病院においてアブレーションを立ち上げ、取り組んでおられる先生から現状をお話しいただき、最前線でのアブレーション治療の現況と将来、およびそれら最前線医療を多くの患者へいかに提供できるかなどの諸点についてディスカッションしたい。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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