日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2F238
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一般講演
Opening wedge法による高位脛骨骨切り術後の大腿四頭筋筋力,膝関節可動域の経時的変化の検討
青木 健松井 克明中曽祢 博史丸山 和彦山崎 郁哉堀内 博志瀧澤 勉秋月 章
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抄録

【はじめに】長野松代総合病院(当院)では変形性膝関節症に対し高位脛骨骨切り術(high tibial osteotomy,HTO)を 1986年より2004年までclosing wedge法にて行い,その後opening wedge法に変更して現在まで行なっている.
本研究の目的はopening wedge osteotomy後の術後回復因子として重要である大腿四頭筋筋力,膝関節可動域(range of motion of the knee joint,ROM)の推移を前向きに調査することである.
【対象と方法】対象は2004年10月から2008年1月までに当院にてOAと診断され,片側opening wedge osteotomyを施行した 34 例34 膝とした.男性12例,女性22例で,手術時平均年齢は男性59.9±9.5(SD)歳,女性59.4±6.0歳であった.
当院の術後リハビリテーションプロトコールはドレーン抜去後,関節可動域訓練,大腿四頭筋訓練,術後3日から1週間より10 kg荷重での歩行練習を開始し,その後1週毎に10 kgずつ荷重を増やし,4から6週間で全荷重,T字杖歩行にて退院となっている.
筋力の測定方法は座位での等尺性筋力評価ではGT-3 0,臥位での等尺性筋力評価ではパワートラック_II_,等速性筋力評価では角速度30 deg/secでCYBEX350を使用し測定した.術後の測定は術翌日~12ヶ月間に定期的に行い,患側最大筋力の値を体重で除したものを体重比とした.統計学的処理は,Dunnetの多重比較検定を用い,危険率5%未満を有意とした.
【結果】座位での等尺性筋力評価では,術後早期に術前と比較して有意な筋力低下がみられたが(男性:術後1~4週間,女性:術後1~2週間,p<0.05),男性の術後6ヶ月で102%,女性の術後3ヶ月で112%と平均値が術前レベルまで回復し,その後も術後12ヶ月まで筋力の上昇がみられた(女性:術後12ヶ月,p<0.05).臥位での等尺性筋力評価は,術後早期に術前と比較して有意な筋力低下がみられたが(男性:術後1日~1週間,女性:術後1日~2週間,p<0.05),男性の術後6ヶ月で106%,女性の術後3ヶ月で100%と平均値が術前レベルまで回復し,その後も術後12ヶ月まで筋力の上昇がみられた.等速性筋力評価は,術後早期に術前と比較して有意な筋力低下がみられたが(男女:術後1~5週間,p<0.05),術後6ヶ月で男性116%,女性121%と平均値が術前レベルに回復し,術後12ヶ月まで筋力のレベルは維持された.ROMは術後早期に有意な可動域の低下がみられたが(男性:術後1~4日,女性:術後1~5日,p<0.05),術後3週間において男性で139±17度,女性で135±10度と平均値が術前レベルまで回復し,その後も術後12ヶ月までレベルは維持された.伸展制限は術後3週間で男性5.6±5.6度,術後4週間で女性3.4±4.0度と,平均値が術前レベルまで回復した(女性:術後1~2日,p<0.05).術前より伸展制限の増加がみられたのは12症例中1症例であった.
【考察】本研究の臥位での等尺性筋力と等速性筋力は,当院でのclosing wedge osteotomyに関する先行研究と比較して術後同時期においてより高い値を示した.これは本術式ではより早く荷重が可能となり,大腿四頭筋,固有受容器への刺激の減少が防止されたことで,下肢筋群の筋力低下を予防したと思われる.ROMに関しては膝関節自体を直接手術したわけではないため、比較的早期に術前レベルまで可動域が回復したと思われた.

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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