日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2J259
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一般講演
肝細胞癌三相撮影に対する150ccシリンジ造影剤使用の有用性
八木 志茂高村 伸二小俣 正上條 謙岡本 英明佐伯 光明金井 信恭
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抄録

〈緒言〉MDCTの出現により肝細胞癌(HCC)に対する造影CT三相撮影は広く一般的に行われている検査だが、その検査方法の詳細は施設によって様々である。従来、本院ではHCCに対する三相撮影ではイオパミロン370 100ccシリンジを使用し、注入速度3ml/sec、全量注入として検査を行ってきた。ところが近年、ANGIO部門に於いてマイクロカテーテルの性能向上に伴い最高耐圧が上がった事から、CT三相撮影では発見されなかったHCCが、腹部血管造影で発見される例が少数ながら出現し、HCCスクリーニング検査としての造影CT三相撮影の存在意義を問われ、それまで行ってきた3ml/secの注入速度を4ml/secに変更する事で、この事態の一応の収束を図った。しかし、注入レートを上げることで造影能を向上させる事ができるのは、学会等の報告より周知の事実だが、身体への侵襲性の増大、副作用リスク増大が危惧されるところである。そこで、オムニパーク300 150ccシリンジ造影剤を使用し、注入レートを上げずに、注入量を増やす事で造影能を向上する事が可能になるであろうか、使用経験をここに報告する。
〈方法〉過去にイオパミロン370 100ccシリンジ造影剤を使用し、注入レート、3ml/secまたは4ml/secで造影CT肝臓三相撮影を行った事のある患者のうち、肝細胞癌の診断を受け、TAE前精査、またはTAE後フォロー検査、OP前精査、OP後フォロー検査、経過観察検査の者を対象として、オムニパーク300 150ccシリンジ造影剤を使用し、注入レートを3ml/secまたは4ml/sec、全量投与で肝臓三相撮影を行った。従来のイオパミロン370 100ccシリンジ造影剤を使用した三相撮影の撮影タイミングはGE横河製CTプログラムのsmart prepを使用し、テストインジェクション10ml注入後の大動脈到達時間を計測し、それをPとした時、動脈優位相をP+5秒、門脈優位相をP+27秒、平衡相を140秒としていたが、オムニパーク300 150シリンジ使用の際には門脈優位相のみを全量注入後+10秒の60秒後とした。撮影はGE横河社製 LIGHT SPEED ULTLA16、評価はGE横河社製ADVANTAGE WORKSTATION 4.0を使用し、右肝、左肝、膵、脾、大動脈、門脈の各部位の、各相に於ける視覚的評価とROI測定を行った。〈結果〉視覚的評価における100ml群と150ml郡の比較では、右肝、左肝、膵では門脈相、平衡相で150ml群が有意に優れ、脾、門脈では門脈相のみ有意に優れた。一方、動脈相については何れの部位についても優位差は認められなかった。ROI測定によるCT値の100ml群と150ml群の比較では右肝、左肝、膵、脾、大動脈、門脈の全部位において動脈相での2郡間の差は認められず、門脈相、平衡相では150ml群が100ml郡に対して有意に優れた結果となった。
〈考察〉多血性肝癌の描出に関しては、注入レートを上げる事で描出能を上げる事ができる。つまり造影剤の総量より単位時間当たりの造影剤の量に依存するが、今回の検討により、門脈相、平衡相について、総量を多くすることで、その観察を明瞭にする可能性を明確にできた。今後の検査において、撮影タイミング、注入レートの最適化をする事で検査の精度向上を図る事ができると考える。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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