日本農村医学会学術総会抄録集
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第57回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2J282
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一般講演
青汁(ケール)により肝障害を呈した1例
井平 圭新 智文松本 隆祐菊池 英明
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抄録

症例:53歳、男性。 主訴:肝機能異常精査 現病歴: 2007年12月 健康診断で肝胆道系酵素は基準値内であったが、便潜血陽性を指摘され、2008年1月9日 大腸精査目的に当科初診となった。1月29日 大腸ポリペクトミーのために入院となった。初診時にAST 238 IU/l、ALT 162 IU/l、ALP 595 IU/l、γ-GTP 525 IU/l、 T-bil 1.4mg/dlと肝胆道系酵素が上昇していたが、 1月29日にはAST 125 IU/l、ALT 77 IU/l、 ALP 530 IU/l、γ-GTP 412 IU/l、T-bil 0.6mg/dlと改善傾向であったため予定通りポリペクトミーを施行した。2月の外来受診時AST 851 IU/l、ALT 589 IU/l、ALP 504 IU/l、γ-GTP 551 IU/l、T-bil 1.4mg/dlと再増悪したため、原因精査加療目的に当科入院となった。 既往歴:出血性胃潰瘍(43歳)、大腸ポリペクトミー(50歳) 飲酒歴:焼酎2合/日、喫煙歴:50本/日×37年 家族歴:特記すべきことなし 入院後経過:HBs抗原陽性であったがHBV-DNA(PCR)<2.6 logcopy/mlであり、その他各種肝炎ウイルスマーカーも陰性であった。また自己免疫性肝疾患も否定的であり、画像検査にても肝腫大や腫瘍性病変はみられなかった。入院後薬剤の内服歴を詳細に聴取したところ、2007年12月頃から秋ウコン、青汁(ケール)を服用していたことが判明した。健康診断時には肝胆道系酵素は基準値内であり、1月には肝機能異常がみられたことより秋ウコン、青汁による肝障害が強く疑われ、これらの服用を中止させた。入院第4病日に施行した肝生検では、グリソン鞘にリンパ球浸潤と多核白血球浸潤があり、また軽度にpiecemeal necrosisを認めた。さらに小葉内にはfocalな肝細胞壊死とリンパ球・多核白血球浸潤が散見し、肝細胞内や毛細胆管内に胆汁色素の貯留が認められた。これらの所見は薬物性肝障害としても矛盾しないと考えられた。またこれらに対するDLST(薬剤リンパ球刺激試験)を行い、青汁で陽性反応を認めた。以上より、青汁による薬物性肝障害と診断した。青汁の服用中止後も胆道系酵素が遷延したため、入院第9病日よりUDCA 600mgを開始した。その後は改善傾向がみられた、入院第13病日に退院とし外来経過観察としている。 考察:近年多くの健康食品が販売され、テレビ、インターネット等を通じて容易に入手できるようになったが、それに伴って健康被害も多数報告されるようになった。肝機能異常をもたらす健康食品としては、ウコン、アガリクス、プロポリス、クロレラ等多数知られているが、青汁(ケール)による報告は少ない。健康食品は、患者本人や家族が「薬物」と認識していないケースが多いため、その服用歴は見落とされがちである。原因不明の肝機能異常においては、青汁を含めた健康食品の服用歴を詳細に聴取することが重要である。

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© 2008 一般社団法人 日本農村医学会
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