抄録
はじめに
慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)が心血管イベントのリスクファクターとして関連し、さらに生活習慣と密接に関連しているとことが明らかにされつつある。
今回、富山県厚生連の高岡・滑川の健康管理センターを平成18年度に受診した者を対象に、改定MDRD簡易式による推定糸球体濾過値(eGFR)を推算し、GFRとメタボリックシンドロームに取り上げられている、腹囲、血圧、脂質、血糖、並びにメタボリックシンドローム(MetS)の関係について検討した。また、10年前の平成8年度にも受診した者について、この間のMetS関連項目の変化とCKDの発症との関連について検討したので以下に報告する。
方 法
平成18年度に厚生連健康管理センターを受診した約15000人を対象に、改定MDRD簡易式により推定GFRを計算し、腹囲、血圧、脂質、血糖についてMetSの基準に基づいて正常者と異常者を分類し、GFRによるCKDのステージ分類(90以上(_I_)、60~89(_II_)、60未満(_III_))に基づき区分し、慢性腎臓病と定義されるGFR_III_の者の比率を比較し、生活習慣病との関係について検討した。
また、10年前にも受診した約5500人について、肥満の指標としてBMI(25以上を肥満とする)、血圧、脂質、血糖値の正常値を保ち続けた者、正常値から異常値となった者、異常値が継続した者におけるGFRを比較した。
結果と考察
年齢別では高齢になるに従い、男女ともGFRが低下しCKD分類_III_の者の比率は。39才未満の者が2%前後に対して、男女とも70才代では約10%であった。
尿蛋白の定性判定で-、±、+の者に比して、2+、3+の者のGFRの平均値が低かった。特に、男では平均値が59.3と60未満となっていた。これを、慢性腎臓病の基準であるGFRが60未満の者の割合で比較すると、尿蛋白-では10%未満であり、±でも10%わずかに超えたが、+では16~18%、2+では40%と約4割の者がCKD分類_III_であった。
次に、メタボリックシンドロームの判定基準の腹囲男85cm未満のCKD分類_III_の割合は、6.5%に対して、85cm以上の者では10.9%と多かった。また、MetSの者関連の各項目の正常に分類される者に対して、異常の者のCKD分類_III_の割合が特に高かったのは、男の血圧、脂質、血糖であり、女では、脂質であった。この項目分類に基づいてMetS-とMetS+とのCKD分類_III_の割合は、男で-の者が7.8%、+の者が11.6%であった。女では-が4.3%、+が3.9%と逆転していた。しかし、MetSの基準をBMI25として区分すると男でMetS-が10.4%、+が13.8%、女で-が7.3%、+が12.0%と差があつた。
次に10年前にも受診した者で肥満をBMI25を基準として血圧、脂質、血糖の10年間の変化が正常、異常の変化を比較すると、各項目およびMetSについて、GFR値は10年間の変化が正常-正常の者の方が、異常-異常の群りGFR値が高かった。
以上のことから、生活習慣とCKDは密接に関連しており、CKDの予防には、生活習慣改善が重要と考えられた。