日本農村医学会学術総会抄録集
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第58回日本農村医学会学術総会
セッションID: WS5-4
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緩和医療における放射線治療の役割
他治療不能と判断され放射線治療を実施した3例
福原 昇松本 好正笹本 孝広長沼  敏彦熊本 隆司伊藤 和正飯村 高行水上 律子平林 文子
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抄録

〈目的〉具体的症例を通じて放射線治療の適応と有用性を
理解してもらう。
〈症例1〉70歳女性。十二指腸ファーター乳頭癌術後,腹
壁再発。主訴は腹痛と上腹部腫瘤。疼痛が増強するため仰
向けの姿勢は長時間とれない状態。電子線1門照射で40
Gy/20回/14日間の治療を実施。疼痛は治療の途中から
軽減し以後は仰向けで寝ることが可能となった。この後に
追加放射線治療を実施。生存中に疼痛の再燃は無かった。
〈症例2〉74歳男性。肺癌,cT4N2M0。病理:低分化
型扁平上皮癌。当科受診時には気管内挿管されていた主治
医は余命2ヶ月以内と家族に説明していた(PS4)。30Gy
/15回/10日間の放射線治療を実施。治療開始後2週間程
度で呼吸状態は改善。この後に抜管可能となり追加放射線
治療を実施。治療終了2ヶ月で自宅に退院。以後4年以上
生存。
〈症例3〉65歳男性。胃癌術後,単発性肝転移。本人の強
い希望にて受診。肝S7/8に直径35mm の腫瘤を認め
た。初診時CA19―96,500U/ml。外来通院で定位放射線治
療(1回10Gy として50Gy/5回)を実施。終了3ヶ月,
9ヶ月でCA19―9は65および11.5U/ml と低下。一般状態
は良好,有害事象なし。以後4年間で3回肝転移を生じた
がいずれの病巣も外来通院での4,5回の定位放射線照射
にて制御されている。
〈考察〉適切な緩和医療は必要である。しかし認識不足で
積極的治療無しと判断して緩和医療のみを行っているなら
問題である。上記の症例以外にも骨転移症例で疼痛管理主
体の治療のみが行われ病的骨折を生じてから放射線治療の
依頼となった症例もあった。骨転移に対しては適切な時期
に放射線治療を実施すれば疼痛軽減効果のみでなく病的骨
折も回避可能である。積極的治療にも緩和治療にも使用可
能である放射線治療の適応を正確に理解していないと本来
なら改善が可能な患者さんに不利益を被らせる可能性があ
る。放射線治療の適応を正確に知っておくことはすべての
医療従事者に必要と考える。

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© 2009 一般社団法人 日本農村医学会
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