日本農村医学会学術総会抄録集
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ISSN-L : 1880-1730
第59回日本農村医学会学術総会
セッションID: W1-3
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北信州地域における心疾患地域連携パスの導入による包括的かつ持続的な医療連携の提供の試み
渡辺 徳金城 恒道神吉 雄一林 悠紀子田中 千恵子神戸 かね子
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抄録

 北信総合病院は長野県最北部の地域医療を担う基幹病院である。20年以上前より救急から専門医療まで総合的に地域医療に貢献してきた。2007年から循環器センターを掲げ、心血管疾患を専門的に診ると同時に地域により密着した医療を提供する努力を始めた。この背景には病院専門医と地域診療所の医師の両者が不足する中で、高齢化した患者が増加する医療情勢がある。また、家庭・社会からは安全・安心な医療を提供するだけでなく、保健・福祉から介護まで包括的かつ持続的な連携が求められている。従来の病院医療はいわゆる急性期医療に重点を置いてきたが、もう一つ大切な点は慢性期まで長期間の安定した治療をする体制である。これには基幹病院と地域のメディカル・スタッフ全ての連携協力が必要とされる。当院は最も問題の多い心不全を対象に2009年6月から“北信州心不全地域連携パス”を周辺の医師会・連携病院とともに開始した。これは心不全の急性期治療を当院で行った後、近隣の診療所に移行し、安心して治療が続けられる相方向連携パスである。専門治療で安定した心臓病の診療情報を提供してかかりつけ医師にこまめに診てもらうだけでなく、退院時に患者・家族に病院のコメディカル・スタッフと地域の保健・介護スタッフを交えたミーティングを行い、薬局や地域の保健施設からのサポートも継続して受けられるように情報交換をする。半年に1回は当院を受診し、かかりつけ医や地元薬局、保健師からの情報を得て専門的に必要な診療を再検・追加する。また、急性悪化の場合にはいつでも当院を受診して入院など急性期医療を受けられ、十分な情報が連携している場所から届けられるので安定・持続的な医療を受けられる。地域連携パスの導入経緯から約1年間で得られた数十例からの経験を報告する。

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© 2010 一般社団法人 日本農村医学会
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