日本農村医学会学術総会抄録集
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第59回日本農村医学会学術総会
セッションID: P2-A1-7
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介護予防健診結果にみる高齢農業者の健康状態
前島 文夫西垣 良夫夏川 周介
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抄録

目的:高齢農業者の介護予防健診結果から健康支援のための優先課題を明らかにすること。
方法:2008年度、長野県内で実施した介護予防健診の受診者の中から、基本チェックリスト(以下CL)、農作業内容、主観的健康感(SRH)について回答のあった男性4913人(農作業なし786人、農作業あり4127人)、女性5564人(農作業なし1179人、農作業あり4385人)を対象として次のような検討をした。1)SRH及びCLの回答結果を農作業の有無で比較。2)農作業ありの人について、SRHを「よい・ふつう」と「よくない」に分けて、CLの回答結果を集計し比較。CLについては、訪問・相談(No.4,5)、運動機能(No.6‐10)、体重減少(No.11)、口腔機能(No.13‐15)、外出(No.16,17)、物忘れ(No.18‐20)、精神的状態(No.21‐25)として検討した。
結果:1)SRH「よくない」は男女ともいずれの年代も10%台で、農作業の有無で有意差はなかった。農作業ありで不良回答が比較的少なかったCLの項目は、訪問・相談(男性65歳‐から80歳‐、女性65歳以上)、運動機能(女性の75歳‐と85歳‐)、外出回数の減少(男性65歳‐、男女とも80歳以上)、精神的状態(男女とも80歳‐)であった。 2)農作業ありでSRHを「よくない」とした人は、「よい・ふつう」とした人に比べてほとんどの項目で不良回答が多かった。中でも運動機能と物忘れ、精神的状態が高率だった。SRH「よい・ふつう」とした75‐79歳の人について不良回答が高率だった項目をみると、男性では物忘れ、訪問・相談、精神的状態、女性では物忘れ、運動機能、外出回数の減少だった。
結論:農作業ありの人は農作業なしの人と比べてSRHに差はなかったが、訪問・相談、運動機能、精神的状態は比較的良好と考えられた。農業者への健康支援については、まずSRHが「よくない」人について治療が必要な異常も念頭において対処し、続いてSRHを「ふつう・よい」とした人について性差も考慮しながら予防策を検討し実践していくことが望まれる。 なお、この調査は農林水産省「農村高齢者の健康支援推進事業」の一つとして行なった。

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© 2010 一般社団法人 日本農村医学会
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