【目的】
脊椎脊髄外科手術において、神経障害を回避する目的で術中脊髄モニタリングが必須となっている。手術操作などによる神経障害を早期に予見し、不可逆的な障害の発生を最小限にとどめ、また、安全性を確認することで最大限の成果を得ることがその目的である。演者は2003年から検査技師として術中脊髄モニタリング業務に携わっており、当院での現状を報告する。
【対象・方法】
2009年度に術中脊髄モニタリングを施行した脊椎脊髄手術85例を対象とした。術中脊髄モニタリングは、経頭蓋電気刺激運動誘発電位(MEP)測定、体性感覚誘発電位(SEP)測定、持続筋電図モニター(Free-run EMG)を組み合わせて施行した。
記録装置はNicolet 社製 Viking _IV_、Endevor CRを用いた。経頭蓋電気刺激(400V・Train 5回・Rate 500Hz・Dur0.5~1.0ms、フィルター low-10~30Hz/high-1.5kHz)により、単極針電極を使用し障害部位に合わせて複数筋からMEPを導出し、振幅の低下、潜時の延長、波形の変化についてモニターした。Free-run EMGは、MEP導出筋と同一筋を、感度100μV・Time Base 500msで、持続的に異常筋電図の出現をモニターした。
【結果・考察】
MEP測定は運動路のモニタリングとして有用な方法であるが、モニターの際に手術操作を止める必要がある。これに対しfree-run EMGは手術操作を止める事なく持続的にモニタリングが可能であるため脊髄への侵襲に対し超早期から反応する利点があるが、鋭敏過ぎる欠点がある。MEP測定に、Free-run EMGを併用することで、脊髄に侵襲を及ぼす前の段階で警告することが可能であると考える。