日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: S1-6
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岐阜県関市在住の一市民としての医療への思い
*山田 武司
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キーワード: シンポジウムI
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抄録

 本学術総会の田中孜学会長が病院長を務めておられるJA 岐阜厚生連中濃厚生病院のある関市は岐阜市の東隣りに位置する人口9万5千人の典型的な地方都市です。
 地理的には日本のほぼ真ん中,濃尾平野の北端にあって,清流長良川の河畔では奈良時代から続く伝統の“小瀬鵜飼”が3人の宮内庁式部職の鵜匠によって受け継がれています。更に鎌倉時代に始まった刀の伝統技術は今日まで受け継がれ,包丁,鋏,カミソリ,カッターなどの家庭用品や産業用刃物,医療メスなどの一大生産基地となっています。昨今の健康志向と結びついた世界的な日本食ブームは調理に必須の包丁の需要を喚起して,関市は刃物生産ナンバーワンの地位を揺るぎないものにしています。
 一方,地域医療の中核である中濃厚生病院を中心に154の医療・保健衛生機関と80の福祉施設があり,3,000人余の人が仕事に従事してきました。私はそんな恵まれた医療環境のこの町に60数年生活し,40年余り刃物生産に従事し,また鵜飼の運営にも携わっていて,そんな恵まれた医療システムの恩恵を享受している立場の一市民として日頃の医療に関して思い付くことを少し述べさせていただきます。
 私には94歳の母がいます。妻と3人の子供,2人の孫の家族です。母は月1回定期的に内科と眼科に通い,近所の接骨院にでかけています。どこが悪いということはないが,1回の自己負担が少ないということで足繁く通う人も多いということです。働いている子供たちは3割負担,孫は大阪の育児医療助成金も受け,1割の負担で治療を受けています。
 それぞれ保険制度の恩恵を受けていますが,お互いに支えあう保険という理念から思うと,時々耳にする医療の話題に釈然としないものがあります。
 時として,治療を受ける側の自分勝手な,しかも過剰と思えるような要求があるのではないでしょうか? もしかしたら制度上それらの要望を受け入れざるをえない医療機関もあるのではと感じています。世界一長寿国で,医療機関と患者や家族が延命の為のみを目的にした加療を強いられるケースが多くなってきているような気がします。
 日本の医療保険システムは手厚く,海外から羨望されているということですが,その制度を維持するためには,近い将来80兆円もの巨費が必要となると聞いています。破綻という言葉の前に,医療制度の現状を私達一人ひとりが自分自身の事として認識することが必要であると思います。
政治,経済など制度の疲弊が叫ばれる激動の社会にあって,現行の医療システムが誰にも納得できるよう改革され,バランスのとれた運営がされることを願っています。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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