【はじめに】
心臓領域のMRIは近年急速な進歩を挙げている。虚血、梗塞、心筋線維化、冠動脈狭窄の評価や心機能評価ができること、空間分解能、時間分解能が高いことにより循環器領域の画像診断にはなくてはならない検査になりつつある。そこで今回、心臓MRIの心筋壁運動の評価について他のモダリティとの比較、検討したので報告する。
【使用機器】
MRI装置:PHILIPS社製 Intera Achieva 1.5T Nova
(WS:AZE社製 Virtual Place Lexus)
心エコー装置:PHILIPS社製 iE33
Angio装置:PHILIPS社製 Integris BH5000
【対象と方法】
2009年1月より2011年4月までにシネMRI・心エコー・左室造影(LVG)を行った10症例を対象とし、左室駆出率(EF)・左室拡張末期容量(EDV)・左室収縮末期容量(ESV)・1回拍出量(SV)を測定する。
【各モダリティの解析方法】
MRI:シネMRIにて左室短軸像を心尖部から心基部まで1断面20コマ計240枚をWSに
て解析
心エコー:modified Simpson法にて解析
LVG:RAO30°、LAO60°の二方向にて解析
【結果】
EF:10症例全てに関してシネMRIが最も低い値となり、心エコーと比較すると平均約28%、LVGと比較すると平均23%の低い値を示した。
EDV・ESV:MRIとLVGにて比較的近い値を示した。また心エコーに関してはほぼ全例にて最も低い値を示した。
SV:各モダリティ間で明らかな相関は示さなかった。
【考察】
シネMRIによる、心機能解析結果としてEFは、他のモダリティに比べ2割から3割程の低値となることがわかった。これは、解析方法が異なることが考えられる。ゆえに、他のモダリティとの値の比較は適切でないと考えられる。しかし、MRIによる心機能解析は患者の体型による描出能の違いや検査者間による差があまり無く、客観的で再現性に優れているため、フォローアップ等の予後検査には適していると考えられた。