日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2C-2
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乳腺腫瘍に対する穿刺吸引細胞診検査での鑑別困難,悪性疑い症例の検討
大谷 里美丑山 茂春日 好雄原田 道彦家里 明日美上原 剛秋月 章
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抄録

【はじめに】乳腺腫瘍の診断において,非侵襲的な穿刺吸引細胞診は質的診断としての役割は大きい.しかし,検診活動の普及や画像診断情報の向上に伴い微小な病変や非触知病変が相対的増加し,良悪の鑑別に苦慮する症例が増加している.今回,乳腺細胞診断精度の向上を目的とし,乳癌取り扱い規約に基づいて鑑別困難および悪性疑いと判定された症例について組織所見と比較し診断根拠や問題点を検討した. 【対象および方法】2002年4月1日から2010年3月31日までの8年間に当院乳腺内分泌外科で乳腺穿刺吸引細胞診を行った1065例,1101病変中検体適正871病変を対象とした.標本は乳癌取り扱い規約の細胞診報告様式に基づき,検体適正は正常および良性,鑑別困難,悪性疑い,悪性に分けた.また,鑑別困難,悪性疑いとした病変で組織学的に確定診断がされた病変について細胞像と組織像を比較検討した. 【結果】検体適正は871病変中,鑑別困難は57病変(6.5%)で,悪性疑いは53病変(6.1%)であった.組織学的に診断が確定されたのは鑑別困難30病変,悪性疑い48病変で,組織学的に良性は17病変(21.7%),悪性は61病変(73.3%)であった.悪性疑いのうち組織診が悪性であったのは48病変中39病変(81.3%)であった.これらの穿刺吸引細胞診標本で細胞の出現形態は乳頭状が最も多いのが特徴であった. 【考察】鑑別困難の占める割合は6.5%と,規約の付帯事項と比較して妥当な結果であった.乳癌は多種の組織型が存在し,腫瘍周囲に乳腺症が存在することも多く,穿刺吸引細胞診では良性細胞が混在することもあり,判定を難しくさせている原因の一つと考えられた.良性病変の特徴とされる細胞所見が含まれていた場合,判定は鑑別困難,悪性疑いにとどめ組織診による確定診断を依頼することが必要と考えられた.

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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