日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 2D-6
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当院における生物学的製剤導入前後の関節リウマチ手術の変化
坪井 声示塩浦 朋根田村 幸久岩貞 勢生玉内 登志雄
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抄録

【緒言】生物学的製剤の使用が2003年に日本でも開始された。従来の消炎鎮痛剤(NSAIDs)、副腎皮質ホルモンでは得られなかった骨破壊抑制効果が報告され、リウマチ治療が飛躍的に変化した。一方免疫療法にともなう感染症も危惧されている。当院では、年間50-110件と多くの関節リウマチ手術が行われており、手術適応、周術期の薬物管理など手術面から生物学的製剤の影響を検討した。 【症例】対象RA手術は1996,1997年度(前期)の227関節(平均年齢61歳)、2009,2010年度(後期)の106関節(平均年齢63歳)である。調査項目:脊椎手術、人工膝関節(TKA)、人工股関節(THA)、人工足趾などの下肢手術、人工肘関節(TEA)、手指、手関節の上肢手術、滑膜切除術の施行数、SSI分類による手術後早期感染の有無、リウマチ治療薬を調査した。 【結果】前期、後期の手術割合は、THAが、33関節(15%)、7関節(7%)、TKAが、128関節(56%)、25関節(45%)、上肢手術が、21関節(9%)、24関節(23%)、滑膜切除術が、18関節(8%)、1関節(1%)であった。SSIは、創治癒遅延が後期で11関節(10%)にみられたが、深部感染は前期、後期とも0関節(0%)であった。使用薬物は、MTXが、前期20%、後期56%、生物学的製剤は前期0%、後期18%であった。 【考案】総手術件数の減少は、生物学製剤やMTXの普及の他にスタッフ異動の影響も上げられるが、手術内容別の比率からは、MTXの普及で疼痛管理が良くなった結果、疼痛軽減を目的とした滑膜切除術の適応が減ったと推測される。進行性の関節障害がコントロール可能になり、既に障害のある上肢関節の手術が増加したと考えられる。今後は、生物学的製剤の効果によりリウマチ外科分野では手術数が減少する可能性があるが、反面手指手術のニーヅ増加がみられること、オーバーユーズによる変形の進行予防指導、創治癒遅延など周術期の管理が重要であると考えられる。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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