精神症状を呈した感染性心内膜炎の1例 平田浩二¹⁾、藤田桂史¹⁾、片山 亘¹⁾、佐藤允之¹⁾、高橋利英¹⁾、亀崎高夫¹⁾、木全 啓²⁾、前田裕史²⁾ 茨城西南医療センター病院 脳神経外科¹⁾、循環器内科²⁾ 【症例】81歳 男性 【主訴】行動異常、会話困難 【既往歴】腰部脊柱管狭窄症(2年前に腰椎部分椎弓切除術施行) 【家族歴】特記なし。 【現病歴】約1ヶ月前から頭痛、めまい、物忘れを自覚し当科初診となった。意識清明で巣症状を認めず、頭部CTでも異常は認めなかったため経過観察となった。しかし不可解な行動、自発性低下、不適切な発語が顕著となり10日後に再受診となった。 【来院時所見】 神経学的検査:JCSI-2、HDS-R10/30pts.と認知機能障害を認めた。 画像所見検査:CT:右大脳皮質下に多発性の小出血を認めた。 MRI(DWI):左小脳、両側大脳皮質及び深部白質に梗塞巣と考えられる高輝度病変を認めた。 血液検査:WBC14100/μl、CRP11.02mg/dlと炎症反応高値であった。 【経過】発熱はなかったが、上記検査所見から感染性心内膜を疑った。聴診すると拡張期心雑音を認め、経胸壁心エコーで大動脈弁に疣腫を認め感染性心内膜炎と診断、抗生剤投与を開始した。定期的にカテーテルによる脳血管造影を行ったが閉塞性病変や動脈瘤は認めなかった。大動脈弁閉鎖不全および疣腫に対し開心術(大動脈弁置換術)を勧めたが承諾を得られず抗生剤投与を継続しWBC7900/μl、CRP5.52mg/dlと炎症反応は改善傾向となった。神経学的にはJCSI-2、HDS-R12/30ptsとスケールでは明らかな改善は認めなかったが、行動異常や不適切な発語は見られなくなり、自発性も改善した。しかし、入院5週目に新たな脳梗塞による左片麻痺を生じリハビリテーションを行なっている。 【考察】急速に進行する精神症状を呈する患者では、感染性心内膜炎を鑑別に入れて対応すべきであり、聴診は速やかな診断治療の一助となる。