抄録
家族看護の重要性
-終末期がん患者の家族との関わりを通して-
伊勢原協同病院 小田倉 由紀
終末期がん患者,家族看護,QOL
<はじめに>がん患者の家族は「第二の患者」と言われている。がん患者への看護においては家族の存在が患者を複数の視点からサポートするものであるため、看護師が家族への看護を行うことは重要とされている。今回、入院前から強い痛みがある進行胃がんの患者を受け持った。入院から退院まで急速な病状悪化を呈した患者と、常に患者のそばに寄り添い続けた妻への関わりを通して、患者だけではなく家族への看護を行うことの重要性を学んだ。
<患者紹介>50歳代、男性、進行胃がん、リンパ節転移。
<経過>入院後よりオピオイドによる疼痛コントロールが開始されたが大きな変化はなく、増量をしても痛みはなかなか軽減されなかった。化学療法が行われたが、徐々に痛みは複数となり増強したうえ、黄疸・腹水貯留などの様々な症状が出現した。入院後早期より妻の泊り込みでの介護が続いており、自分は何もしてあげられない、そばにいてあげることしかできないという妻の思いがあった。疑問があれば積極的に質問をし、清潔ケアを含めた日常生活援助に対して自ら取り組む姿が見られた。疑問の解消のためにも積極的に話す時間を設けるとともに、ケアのタイミングや部分ケアの方法などを話し合いながら一緒に行うという形で関わっていった。また、妻が疲労を溜め込まないよう声をかけたり、休める時間を作るなどの対応を行なった。しかし、症状のコントロールができないまま患者の意識レベルは低下した。化学療法の継続も困難となり緩和ケアへと移行したが、状態の改善はなく、家族に見守られる中、静かに息を引き取った。
<結論>終末期の患者の看護において早期から家族への介入を行うことで、患者・家族のQOLを高めることができる。そのためにも家族看護について理解を深めることが重要となる。