日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1J-B-3
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両側大腿骨近位部骨折における変形性膝関節症の関連性の検討
横山 友香沖 公平近藤 俊貴松橋 弘樹中村 訓之鈴木 康友
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抄録

【はじめに】昨今の高齢化により、大腿骨近位部骨折(以下近位部骨折)の発生率は増加している。これに伴い、反対側を受傷する両側大腿骨近位部骨折(以下両側骨折)も増加傾向にある。そこで、両側骨折と主な合併症の一つである変形性膝関節症(以下膝OA)との関連に着目し、調査したので報告する。 【対象・方法】2008年4月~2011年3月の期間で近位部骨折を受傷し、当院にてリハビリを実施した60歳以上の近位部骨折240例(男性37名・女性203名、平均年齢84.0歳:以下片側群)、両側骨折17例(全員女性、平均年齢84.1歳:以下両側群)を対象とし、後方視的に年齢・既往歴・受傷機転等を調査した。 【結果】近位部骨折受傷以前に膝OAの既往を有するもののうち、片側群43例(17.9%)、両側群12例(70.5%)と、両側群で高い値を示した。なお、両側群の受傷機転は、全例転倒であり、対側受傷までの平均期間は465日 (17日~878日)であった。 【考察】膝OAの既往の有無により両側骨折の受傷率は3倍となり、両側骨折の受傷には膝OAの関与が示唆された。膝OAは、疼痛の出現や、関節可動域制限、大腿四頭筋筋力低下などの機能障害、さらに膝内反変形、膝内外反動揺増加など構造学的な問題をも来たす。その結果、支持基底面の低下、立脚期における立脚側への体幹の側屈や、四頭筋の筋力低下によるステップ反応の遅延、疼痛による活動量の低下など様々な現象が生じ、転倒リスクが増大すると考えられる。今後は、膝OAの既往を有する近位部骨折患者における対側骨折を予防するための訓練を検討する必要性がある。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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