日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1J-B-7
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回復期病院の少ない地域における急性期病院の役割について
-地域特性から急性期リハビリテーションのあり方を考える-
中山 陽介沼尻 一哉
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抄録

【目的】当院は茨城県南西部の県境に位置する急性期病院である。当医療圏に回復期リハビリテーション病床は無く、患者は生活圏外への転院を強いられることも少なくない。今回は当院から回復期病院への転院状況を調査し、当地域における急性期リハビリテーションの役割について検討したので報告する。<BR> 【方法】対象は過去3年間に回復期病院へ転院した脳神経外科患者、平成20・21・22年度:84・80・88例とし、医療ソーシャルワーカー(以下:MSW)介入までの日数・MSW介入後転院までの日数・在院日数・リハビリテーション(以下:リハ)開始時の機能的自立度評価(以下:FIM)・転院時FIMについて、後見的に調査した。統計処理は、有意水準を0.05としクラスカル・ウォリス検定を実施した。<BR> 【結果】転院47.4%のうち回復期病院への転院は26.4%であった。回復期病院への転院に関しては、圏域内在住で県内への転院25.7%に対し、半数を上回る54.3%が他県へ転院している。統計上年度間で有意差は認めなかったが、MSW介入までの平均日数は19.3±13.4日・18.6±11.9日・14.5±11.1日と年々早まり、MSW介入後転院までの平均日数は25.8±12.5日・27.0±11.3日・30.7±16.0日と増加している。<BR> 【考察】結果より回復期病院転院までの待機期間が増加する一方で、回復期における十分なリハを受ける機会が減少することになる。また半数以上が県外へ転院し、生活圏内での在宅・社会復帰までの支援が困難である。これら当地域の特性から、今後は急性期・回復期など病院毎の機能分化ではなく、一部で議論されている地域一般病床など、一般病院内での機能性を重視したシームレスな対応が求められる。また、地域完結型医療体制を構築するため、急性期病院にてより手厚いリハを実施し、在宅復帰率・地域生活支援の向上に繋がるような働きかけが重要となる。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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