日本農村医学会学術総会抄録集
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第60回日本農村医学会学術総会
セッションID: 1J-B-20
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安城更生病院におけるフィブリノゲン製剤の使用実績
中山 尚美山本 喜之原田 康夫山本 敦子
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キーワード: フィブリノゲン製剤
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抄録

【はじめに】近年、大量出血の際の凝固障害にはフィブリノゲン(以下Fig)の低下が重要であることが指摘されている。低下したFig値を止血可能域まで上昇させるには高単位のFFPを必要とし、また危機的出血時には短時間にFig値を上昇させる必要があり、物理的に困難な状況も想定される。当院では危機的出血への対応として2010年3月からFig製剤を一部の症例で使用し、その有効性を確認している。今回、当院でFig製剤を導入した経緯、使用実績、今後の課題を報告する。<BR> 【経緯】危機的出血におけるFig製剤の有用性について講演会を行い院内で認識を共有し、輸血療法委員会にて運用方法の検討を行った。院内採用にあたり、1)効能外使用の説明を必ず行いICを取得すること、2)使用はFig値が150mg/dl以下となることが予想される危機的大出血に限ること、3)使用前後にFig値を測定すること、4)輸血療法委員会にて全例検証することを遵守事項とした。<BR> 【使用実績】2010年3月から2011年2月までに合計12例使用され、内訳は術中10例、術後1例、血管撮影室にて1例であった。診療科は心臓血管外科5例、外科5例、整形外科1例、泌尿器科1例であった。使用決定時のFig値は平均99mg/dl(35~147mg/dl)、出血量は中央値6579ml(2959~22800ml)であり、投与判断は麻酔科医師が大半を占めた。1回投与量は3gが4例、4gが8例であり、止血不十分で追加投与した症例は2例であった。また投与にあたり、FFP併用10例、単独使用2例であった。投与後のFig値は60~100mg/dl程度上昇し、有効性について執刀医判断では著効・有効が大半であった。ICの術前取得は1例にとどまり、術中や使用時の取得が10例、術後1例であった。<BR> 【結語】危機的出血時の止血コントロールとしてFig製剤使用は非常に有効であった。しかし効能外使用のため運用法には慎重を期する必要があり、使用決定のタイミングが難しい。これらを解決するために、Fig値以外に出血量やバイタルサインなどの投与判断基準が必要と思われる。またIC取得は術前が望ましいと考えられるが、実際は術中の緊急時が大半であり、今後更に検討し改善したい。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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