抄録
1. ClO2改良一段處理法に依りて種々の針葉樹,濶葉樹及び其他の繊維素を定量し,且つ其のα, β, γ繊維素と灰分及び比粘度を測定した.
2. 其の結果ClO2法は繊維素を化學的には侵さないが,共粘度には著しい影響を與へるものなる事を知った.
3. 濶葉樹の中にはヤマナラシの如き繊維素の含量の著しく大なるものがあり,其のリグニンの除き易い性質と相俟つて,蒸解,漂白に特別の考慮を拂へば人絹パルプとして大いに研究の餘地のある事を示した.
4. 禾本科植物が豫想に反して優秀のものであり,パルプ資源に乏しき折柄,其の再檢討は焦眉の急であると論じた.
終りに臨み志方教授の御指導を深く感謝す.