日本農芸化学会誌
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菌核菌の生化學的研究
(第9報)III. Acetylesteraseに就て(i)Cholinesteraseに対する阻害作用
里村 幸男
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1953 年 27 巻 9 号 p. 621-624

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抄録

菌核菌抽出液のacetylesterase区分と血液cholinesteraseとを同時にacetylcholineに作用せしめ,WARBURG氏検〓装置を用いmanometricに作用力を測定した結果,顕著にChEの阻害が現れることを知つた. AcEを加熱不活性化した場合も同様である. AcEのChEに対する阻害はAcEのAchに対する特殊な作用機構に基づくものであり, AcEが或る濃度のinactiveな基質との結合を行い基質を拘束するためであろうと考えられた. AcEは長く透析することによつて失活すると,同時にChEに対する阻害も現れなくなるが,これに加熱不活性化した酵素液を添加するか又は透析外液を添加すれば復活する.従つてAcEは加熱にょつても基質との結合に必要なessential group (coenzyme)は残り,それが基質とinactiveな結合物を作り得るので熱処理酵素液によつてもChEに対する阻害が現れるのではないかと考えられた.既報の如き菌核菌抽出液中の子宮収縮性物質の本態は恐らくAcEの化学的本態と密接な関聯があり,子宮収縮の作用機転はChEの阻害に起因するのではないかと考えられる.

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