日本農芸化学会誌
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わさびに関する研究
(第1報)わさび及びからし(黒からし)の辛味成分について
長島 善次
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1954 年 28 巻 2 号 p. 119-122

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抄録

わさびを磨粋し水蒸気蒸溜して得た油状辛味成分(辛味成分はすべてここに集る)にアンモニヤを作用させて得た粗粉末を,水及び醋酸エチルを溶媒したC. C. D.に依りComp. A, B, Cの3つの部分にわけた.
Comp. A m. p. 68.5°~73.5°,鱗片状結晶,混融試験に依りallyl thioureaであること合確認した.
Comp. Bシラップ状, C. C. D.の理論値,ペーパークロマトグラフイ紫外部吸収曲線等に依り之はsec. butyl thioureaであることを確認した.
Cimp. C約75°で昇華をはじめ, m. p.約95°を示す吸湿性の大きい針状結晶.之は紫外部吸収曲線の形状より辛味に開係ないものと思われる.
以上より,わさびの辛味成分はallyl isothiocyanateとsec. butyl isotbiocyanateで,その割合は前者100に対し後者7乃至10であつた.
又からし(黒からし)の辛味成分についても同様の方法に依り在来単一とされていたallyl isothioeyanateの他に,微量ではあるがsec. butyl isothiocyanate(前者100に対し約5)の存在を認めた.
かくして,辛味成分(之は又同時に強烈な香りの成分でもあるが)に関してはわさびもからしも殆んど同一であることを知つた.わさびの香りにはこれらmustard oilの他に,いわゆる植物の青くささが加わり,からしにはmustard oilに,いわゆる芥子油油等の香りが加わり,わさび,からし,それぞれ特有の風味を生ずるものかと思われる.
この実験は文部省内地研究員として東京大学派遣中に行つたもので,御懇篤な御指導を賜つた住木教授,又実験につき種種御指示と御便宜を与えて下さつた田村助教授はじめ住木研究室各位に心からなる謝意を捧げる,又たえず御鞭達いただいた静岡大学六所教授に厚く御礼申し上げる.

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