日本農芸化学会誌
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馬鈴薯の褐変と呼吸に関する酵素的研究
1. 馬鈴薯切片の呼吸
本田 幸一郎小田 圭昭
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1955 年 29 巻 1 号 p. 32-36

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抄録

馬鈴薯より分離したtyrosinaseは酸化還元色素で阻害され,その阻害は電位の低いもの程強い.
馬鈴薯切片は調製後時間の経過につれて酸素吸収が増加し, 70時間位で最高に達する.
酸素吸収が増加している切片は酸化還元色素で酸素吸収が阻害され,其の様子は分離したtyrosinaseに類似する.
馬鈴薯切片の酸素吸収の増加とmethylene blueの脱色時間とは反対の結果を示し,酸素吸収の増加は脱水素系に無関係に行われている.併し馬鈴薯の熱抽出物を加えるとmethylene blueの脱色時間は短かくなる.
新鮮な切片はmono-iodoacetateで酸素吸収が阻害され, thioureaでは阻害されない.
以上の事実より馬鈴薯の正常呼吸は脱水素系を経由して行われでいるけれ共,組織が損傷された時は脱水素系で抑圧されていたtyrosinaseの活性が増大し, phenol類の酸化が起り,この為酸素吸収が増加し,これが組織褐変の原因となると推論した.
本研究の一部は昭和28年4月農化大会に於て発表した.又実験の一部は本学実習生牧俊夫君をわづらわした.記して謝意を表す.

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