抄録
茶葉のサンプリングの多くは,茶芽の急速に生長している途中で行われるから,摘採時の僅かのずれも鋭敏に茶芽の熟度に反映し,摘芽の物理的,化学的性質に影響する.しかもこの摘採時を正確に指示することは技術的に困難である.それで茶葉の化学成分を比較するときにも,試料の熟度がそれぞれ違つているのでこれを揃えた上でなければ意味がない.よつてまず,たまみどり品種園における分析試料採取の一様性の検定を行い,タンニン及び全窒素と茶芽の成熟度との関係を調べた.
調査した成分のうち,全窒素はこの試料については熟度による修正は必要でなかつたが,しかしサンプリングの条件が変るとやはり修正の必要が生ずるであろう.タンニンの分析値はこのような出開度の範囲の狭い試料においても,出開度による修正の必要を認めた.
そしてタンニンの最も合理的な値として,摘採適期の茶葉の出開度に修正した値を求め,これの信頼限界を算出した.
また,タンニン及び全窒素の定量法の精度に釣り合つたサンプリングをするための試料の大きさを検討し,試料の出開度が摘採適期の出開度より5%くらいずれた程度では,試料の数は10個内外で十分なことを知つた.
この報文中の統計的な事項については,農林省農業技術研究所奥野技官に負うところが多く,厚く謝意を表する.またこの報文の要旨は,昭和30年9月,日本農芸化学会中部支部第4回例会で講演した.