日本農芸化学会誌
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各種凝乳酵素による牛乳凝固蛋白質の比較
牛乳凝固酵素に関する研究V
佐々木 林治郎津郷 友吉山内 邦男
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1956 年 30 巻 4 号 p. 209-213

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抄録

脱脂乳から酸及び各種凝乳酵素(レンネット,ペプシン,パパイン及びフイシン)によつて凝固分離したカードを同一条件下で電気泳動的に比較した(pH 7.6, μ=0.09燐酸緩衝液, NaClを0.08N含有).これらの酵素をNa caseinate溶液に作用させた場合も同様に比較した.結果は次の通りである.
1) 脱脂乳カード及びNa caseinate溶液における場合も共にレンネットとペプシンの作用は相似していた.両者においてα-カゼインの部位が特に不均一になる.
2) パパイン及びフィシンで凝固した脱脂乳カードはレンネット及びペプシンのそれとかなり異る.その電気泳動図からみて,より以上の分解が進行するのではないかと思われる.
3) Na caseinate溶液に牛乳を凝固ぜしめる程度の量のパパイン及びフィシンを加えると瞬時に凝固沈澱が生成する.レンネット及びペプシンではこのようなことは全く認められない.パパイン及びフィシンが牛乳中におけるよりもNa caseinate溶液においてより速かにカゼインを分解することが電気泳動的観察からも認められる.
4) 酸性脱脂乳(pH 5.1)から凝固分離したカードの電気泳動図は酸カゼインのそれと殆んど変らないが, pH 6.6又は5.5の脱脂乳から凝固分離したものとは相異した.このことはカードの性質がそれを調製する牛乳の酸度によつて変化することを示すものと思われる.
5) レンネット及びペプシン・ホエーはβ-ラクトグロブリンの峰において酸ホエーと若干相異していた.即ちこれらの酵素で分離したホエーはβ-ラクトグロブリンが2つの峰に分離した.パパイン及びフィシン・ホエーでは酸ホエーと同様このような分離は認められなかつた.

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