1956 年 30 巻 9 号 p. 535-537
1) 魚体組織の腐敗過程においてDYERのTMA定量法を阻害する溷濁形成物質は,主としてカダベリンである蕪をペーパークロマトグラフィ,呈色反応,分解点及び元素分析並に合成カダベリンの諸性質と比較検討した結果より判定した.従つて第1報に述べた各種条件下における溷濁物質の消長は主としてカダベリンの消長を意味する事になる.
2) 腐敗組織よりのカダベリンの分離精製法について検討した結果DYERのTMA定量法の原理を応用した改良法が最も効果的であつた.本法はカダベリンに対する選択性が高く,しかも簡易な分離法として利用価値があるものと思う.
3) 合成カダベリンを用い,その量と溷濁度との関係を検討した結果,或る濃度の範囲内では溷濁度は濃度と共に比例的に増加する傾向が認められた.この事実はカダベリンの定量に応用出来る可能性がある.
4) カダベリンの脱アミノ環状化合物であるピペリジンはDYERのTMA定量法によりTMAと同様に発色し,しかも単位窒素量当りほぼ同程度の発色度を示し,試料にピペリジンが共存する時はその定量が不可能である事を認めた.