日本農芸化学会誌
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プロピオン酸菌の醗酵化学的研究
(第6報)プロピオン酸の酸化(その2)
市川 吉夫
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1957 年 31 巻 3 号 p. 185-189

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抄録
嫌気的条件に於てプロピオン酸の酸化はピオチアニンの還元と共軛して行われるが,この反応にアデノシン三燐酸及び酵母エキスが促進的効果を有することが認められた.酵母エキス中の有効成分は陰イオン交換樹脂によって吸着される酸性物質である.パントテン酸欠乏菌体に於てプロピオン酸酸化能が殆ど認められず,パントテン酸と予め接触せしめることにより該作用の回復が認められること,菌体抽出液に就てはパントテン酸の効果が認められないこと,プロピオン酸の酸化に際してヒドロキシラミンと反応してヒドロキサム酸を生成する物質が認められること等の事実から酵母エキス中の有効成分はCoAであることが想像される.従って静止菌体によってプロピオン酸から酢酸が生成される反応はATP及びCoA関与の下に次に添すような過程を経て行われるものと推論される.
propionate〓 propionyl CoA〓acetyl CoA〓acetate+CoA
本研究を行うに当り,終始御懇篤なる御指導を得た恩師片桐英郎教授に深甚の謝意を表します.又本実験に使用したパントテン酸カルシウムは醗酵研究所(現静岡大学教授)近藤圭二氏,ピオチアニンは当研究室の倉地守氏より供与を受けたもので両氏の御好意を厚く感謝します.なお本研究費の一部は文部省科学研究所助成金によったこと,及び本報告の一部は昭和31年3月30日日本農芸化学会東京大会に於て発表したことを附記する.
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